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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■古畑VSイチロー/ドラマ『1リットルの涙』第2回
 どうして私が来ないと父が思い込んだのかは定かではないが(笑)、口は全然満足に利けるようである。「どげんあると?」と聞くと、「朝からなんか手の感覚がなかったけん、あ、ついに来たとかいなと思って、病院で見てもらうことにしたったい」
 「姉ちゃんは『無理やり病院に行かせた』って言いよったけど?」
 「なんがもんか。私が自分で来たと」
 どっちの言い分が正しいのか、そりゃどっちでも構わないのだが、とりあえず命に別状はないようなのでホッとする。
 「最初は××病院に運ばれるところだったとぜ。ほら、××病院はお母さんが倒れて、最初に運ばれて、ここじゃ治療できませんからって、こっちの病院に運ばれたろうが。だけん、××病院はやめてくださいって頼んでこっちにしてもらったったい」
 事実、母が死んだ時に呆れてしまったことなのだが、救急車の職員は、手近な病院に患者を適当に運び込むだけで、そこが脳出血の治療設備があるかどうかなんて全く知らないのである。つか、脳出血や脳梗塞の治療設備もない病院が救急病院の指定なんて受けてること自体、問題なんじゃないのか。ともかく西方沖地震の時もそうだったが、福岡の病院事情は全くデタラメなんである。
 とか考えてたら、主治医の先生が来られた。メガネをかけた細身の、袴田吉彦にちょっと似た感じの先生で、心の中では「こいつも藪じゃねえかな」とか思いながら顔はにこやかに「父の具合はどうなんでしょう?」なんて聞いてみる。
レントゲン写真を見せながら、「この右側の部分に白いのがあるでしょう。視床下部なんですが、ここに脳梗塞ができていて、それで手の感覚がなくなってるんですね。けれど、麻痺とは違います。脳梗塞の中では一番軽い症状だと考えてください」
 「それはまた元通り動かせるようになるということですか?」
 「元通り、というのは難しいと思います。後遺症が出る可能性もありますし。けれど、放っといたら悪くなるばかりですから、それをこれ以上悪くならないように止めることですね。今はともかく点滴をして、検査をしているところです」
 要するに、「まだどうなるか分からん」ということなのだろう。心なしか、父の表情が曇ったように見えた。また仕事ができるようになるか、不安なのだろうと察していたら、先生が退出したあとで、「これでしばらく酒が飲めんなあ」と言ってため息をついた。
 この期に及んでまだ「酒」かよっ! 半身不随になるとか、言語障碍を起こすとか、植物人間になるとか、そういう心配もあったのに、呑んだくれはこれだからもう。

 数少ない読者のみなさま、途中までは思わせぶりな書き方になってしまいましたが、覚悟しなきゃならないような状況ではなかったようでホッとしてます。まだ容態が急変するんじゃないかとか考えると油断はできないのですが、とりあえずは父がそんなに落ち込んではいないようだったのが幸いでした。
 しかし、病院に行く途中、しげが「来月、父ちゃんと一緒に旅行に行くの予定しとったろ? キャンセルせんといかんね」と言ってたのを「いや、意識があるなら意地でも行くよ、あのオヤジは」と返事していたら、病室で父は本当に「来月の旅行には行くからな」と言い切りました。その時までには絶対に退院できる、いや、「退院する」つもりでいるんですね。全く、懲りないオヤジ殿であります(苦笑)。


 ドラマ『1リットルの涙』第2回。

 亜也(沢尻エリカ)は自分が脊髄小脳変性症であることをまだ知らない。母の潮香(薬師丸ひろ子)がその現実を受け入れることを拒んで、未だに本人に伝えられないでいるためだ。担当医の水野(藤木直人)の診断を拒んで、セカンド・オピニオンを脊髄小脳変性症の権威である宮下(森山周一郎)に求めるが、結果は変わらない。ついに潮香は夫・瑞生(陣内孝則)に亜也の病名を告げる。そして二人は亜也の、恐らくはこれが最後になるだろうバスケの練習試合を家族で応援に行く……。

 苦手なのに今週も見ちゃったよ、『1リットルの涙』。

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10月18日(火)
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