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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■15万ヒット大御礼/ワークショップ『演出家・森田さんの「イッセー尾形ができるまで」』Part1
 「この『思い出す』ということが大事なんですよ」と仰る森田さん。ちょっと喋って黙ってしまう人には「続けて」「間を置いて別の言葉を」と次々に指示が飛ぶ。当然、言葉に詰まってしまう人もいるのだが、「困ったところから続けるのが大事なんですよ。もう分かった人もいると思いますが、これは『とっさの時の返事の仕方の訓練』なんです」ということだそうだ。
 さらには、「へりくだった人」「バカをあえて演じている人」の言葉を要求され、最後はそれぞれの役柄を組み合わせて、椅子に向かい合わせてアドリブでやりとりをさせる。
 「『会話』はしないようにね。それをすると下手に見えるから」。この指摘には正直、驚いた。今、私たちが演じているのは、私たちよりもちょっとだけヘンな人である。そういう人は、「いばりたい」「へりくだりたい」「バカと見られたい」、それだけの人である。けれど、そういう人の方が我々よりも面白いのだ。なるほど、「他人の言うことを聞かない」人の方が、舞台の上ではキャラクターがハッキリするのだ。目からウロコの気持ちであった。
 今日はここまでであったが、参加している最中、こんなにドキドキワクワクするとは思わなかった。上手下手はあろうが、自分は演劇が好きなんだ。今更ながらにそれを実感した三時間だった。逆にしげは、すっかり怖くなってしまっている。
 「自分で舞台を作る時は怖くないのに、人のところに飛び込むとどうして怖いんだろう?」
「俺も怖いよ。そうは見えない?」
「うん」
 「人が怖くない人間なんていないよ。とっさのときどうしたらいいのか分からないから訓練するって、お前にぴったりの演劇じゃん。やってみなよ」
 しげはそれでもまだグジグジとしていたが、私は、森田さんの演出で、しげがどんな演技をするのか、見てみたいのである。

 小倉駅から電車に乗って、しげとは戸畑で別れる。しげはそのまま若松まで行って、よしひと嬢の家に泊めてもらうのである。私は、博多駅からバスに乗り換える予定であったが、最終バスに一分の差で間に合わなかった。仕方なく、家まで50分の道のりを歩いて帰る。帰宅して風呂に洗濯。久しぶりの独身の夜であるが、当然、家事は全部、私が一人でやらねばならないのであった。

09月13日(火)
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