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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■ヒビキ狂想曲/舞台『ラーメンズ・プレゼンツ GOLDEN BALLS LIVE』
白倉伸一郎プロデューサーのブログでは、今回の騒動を知った上でわざと「釣られて」、「重態で捨てられた子供を引き取った」と形容している。29話まで、展開が遅々として進まなかったのは事実なのだから、「重態」と言われても仕方のない面はあるし、「捨て子」の比喩が正しいのであれば、現場放棄をしたのは前スタッフの方かもしれないという可能性もある。もちろんこれは「引き継いだ側の論理」で書かれている文章だから、全面的に信用するわけにはいかない。「真実」はもうしばらくしないと明かされることはないだろうが、そのときでないと、この騒動の評価は定まりようがないと思う。
今日もヒビキさんは「きびだんご紅」というしょーもないギャグを飛ばしてくれて、団子詰めをチマチマやってる様子を日奈佳に「不器用」と容赦なく断定されてしまうという、ヒーローっぽくない情けない姿を見せている。こんな些細なシークエンスまで、ファンの反発を買っているのは、やっぱり「袈裟まで憎い」レベルまで落ちてるよとしか言いようがないのである。確かに私も『アギト』のころはこの手の井上敏樹の寒いギャグはいちいち癇に障って仕方がなかったのだが、『響鬼』の中だとヒビキのキャラクターから考えて、決して不自然な印象はないと思うんだがねえ。
昼、メルパルクホール福岡で、ラーメンズ・プレゼンツ『GOLDEN BALLS LIVE』。
早めに現地に着いたので、近所を散歩、「九州エネルギー館」を覗いたあと、会場に入る。お客さんは殆どが女性。演劇ファンというよりはラーメンズへのアイドル人気なんだろうなあ。隣の席の女性が、観劇中、片桐仁を見て感極まったと言うように「素敵……」と呟いていたのが芝居以上に印象的だった。
タイトルは、ラーメンズの二人に、野間口徹、西田征史、久ヶ沢徹の三人を加えて「GOLDEN BALLS」というユニットを結成した、という体裁だけれども、直訳すれば「金玉は生きている」である。いいふざけ方だ(笑)。
様々なスケッチを映像を間に挟んで進めていく形式や、シュールなギャグからシチュエーションコメディまでありとあらゆるギャグをぶち込んで行こうとする姿勢は、モンティ・パイソン、シティボーイズの流れにあるが、ラーメンズの強みは、若くて体技にキレがあることがそれぞれのギャグをよりシャープにしている点にある。今回の舞台もそれは充分に発揮されているのだが、ちょっと残念だったのは全員、なぜかトチリが多くて、芝居の流れが止まることが多かったことだ。小林賢太郎が「今日は全員がそれぞれに傷つく日だ」と自嘲的にギャグを飛ばしていたが、一応、会場は笑ってくれてはいたけれども、役者としては反省しなければならないことは言うまでもない。
けれども、『アリス』でも感じたことなのだが、そのギャグのアイデアの豊富さには正直、驚かされているのである。しかもそれが体技を生かした「舞台」でしか表現できないものが多いことに、感服している。例えば、冒頭のパントマイム勝負のスケッチ、五人がずらりと並んで、畑から野菜を引き抜くマイムを演じる。「ダイコン」「ニンジン」……と来て、それまではみんな同じパフォーマンスだったのが、最後に小林賢太郎が「ゴボウ」と言って、一人だけ“長く”野菜を引き抜く。これだけのことなのに笑いが起きるのである。ちょっとした違和感を笑いに結びつけるセンス、簡単なようで、自分で演じてみればこれがどれだけ困難なことか分かる。ちょっと動きに余計な「タメ」が入っただけで観客は笑わなくなるのだ。
当然、全部のギャグは紹介しきれないが、いくつか、私が好きなスケッチを。
「愚問道」を極めようとする五人。師範代(片桐仁)に向かって、四人が、「愚問」を投げつける。「魔女の宅急便が出てくる映画はなんだ!」。切り返す師範代「魔女の宅急便!」……確かに愚問だ(笑)。
「人生のチャンスを掴もう」と、旅を続ける若者(西田征史)。そこに現れた樵の二人(小林・久ヶ沢)は「これが『チャンス』だ」と言って、山椒魚みたいなヘンな生き物を見せる。「チャンス」とはそのドーブツの名前なのだった。実はほかにも「ビッグチャンス」「ダブルチャンス」「宇宙チャンス」などもいたのである。
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09月11日(日)
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