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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■復活のまつもと泉/DVD『クモ男の復讐』
 全く、なかなか実力のあるライターさんが作られているのだなあと感心することだ。もしかしたら白石監督自らの手になるものかもしれない。確かに、新聞も週刊誌も読まずテレビも見ず、世間の一般的なニュースに関心がなくて、ネットだけで情報を仕入れているような人間なら、このホームページとかをざっと見て、「小林さんって、今行方不明になってるんだ! 心配だなあ」なんて騙されてしまうこともありえるかも。いや、かもじゃなくて、現実にやたらいるのがなんて言ったらいいのかなんだけれど。


 かつて『少年ジャンプ』に『きまぐれオレンジ★ロード』を連載していたまつもと泉さん、そのあとも何度か小さな連載はあったものの、プッツリと音沙汰がなくなってしまっていて、すっかり「消えたマンガ家」になってしまっていた。
 実はまつもとさんは「脳脊髄液減少症」という難病に罹っていて、六年間の闘病生活を続けられていたのである。この病気は、「脳と脊髄の周囲を循環している脳脊髄液が漏れて脳の位置が下がり、頭痛やめまいなどの症状が出る」病気で、治療法は「患者本人の血液を注射し、血液凝固で髄液が漏れた場所をふさぐ」という、聞いただけでイタくなるようなことをしなければならないとのことだ。
 まつもとさんは今もまだ治療中だが、体調は半分程度、回復したとのこと。これを受けて、新連載マンガも来年スタートを目指し、さらには自身の闘病生活もマンガにして出版する準備を進めているそうだ。あまり世間に知られていない病気であるために(まつもとさん自身も、自分の病気が何なのか分からずに40回以上も転院している)、原因が分からないままに長年苦しんでいる患者が世界中に大勢いるはずだという。まつもとさんは、「失意のまま死んでいった人もいるだろう。漫画の力でこの病気のことを伝えたい」と製作意図を語っている。
 マンガ家が連載を休載したとき、「作者病気のため」と断りが出るものの殆どが「ただの原稿落とし」で、本当に病気だったわけではない、というのは常識のようになっている。しかし、現実に本当に病気で描けなくなってしまっている人も多いと思う。何と言ってもマンガ家は過酷な職業だ。体力気力、ともになければやっていけるものではない。しかし、若いうちならばともかく、年を取ってくれば当然、それまでのムリが体に影響を与えていくようになる。まつもとさんの場合も、医者の話によれば「強い力で指圧を受けたことや、不眠不休による過労が続いたことで一気に悪化したのでは」ということだ。
 いったん、戦列を離脱したマンガ家に対する出版社の扱いは冷たいことが多い。まつもとさんがこうして復活の目途が立ったというのは、これまで描かれてきたマンガに本当に魅力があったこと、そして、流行に流されずに復活を待ち望んでいたファンがいたからこそだと思う。
 『きまぐれオレンジ★ロード』をお読みになった方ならばお分かりだろうが、第一巻と最終巻とでは絵柄が全く別人のものと言っていいほどに違う。連載中に作画技術が向上することによって絵柄が変化することはよくあることだが、ここまでの上達ぶりはちょっと普通ではない。まつもとさんがどれだけ「努力家」であったかが、絵柄から伺える。正直な話、『オレンジ★ロード』は、当初の超能力ドタバタものが次第にラブコメから深刻な三角関係ドラマに移行していったのが読んでいて辛かったのであるが(当時は私もまだまだ青春野郎だったしなあ)、それだけまつもとさん自身が人間としての心の深みを増していったのだと言える。
 病気を克服したまつもとさんがどんなマンガを描かれるのか、楽しみにしたい。


 夜、テレビで『積木くずし 真相』の後編。
 昨日の前編は見損ねたけど、後編だけ見ても筋は充分に分かるんで問題なし。
うちの日記、昨日から「積木くずし」とか「穂積由香里」とかのキーワードで検索してくるお客さんがかなりいたんだけど、たいして情報があるわけじゃないのにマメな人もいるものである。

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09月03日(土)
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