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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■夢の中の人/『ムーミンのふたつの顔』(冨原眞弓)
第一回公演の少し前までは元気だったのだ。けれども神様はK君にたいして時間をくれなかった(だからやっぱり神様はいないのである)。病状は悪化し、劇団活動はできなくなった。それからしばらくして、K君のご家族から連絡があって、病状がやや回復したことを伝えられはしたが、それでも劇団に戻ることは期待できない状況だった。それ以来、もう十年近くが経ってしまったが、ご家族からの連絡は途絶えている。
「(ご家族も)よくなったら連絡するって言ってたし、何もないってことはまだよくないってことじゃないの?」
「やっぱりそうかなあ」
「あんた、『K君が戻って来るまでは劇団を続ける』って言ってたやん」
「言ったかな、そんなこと」
私の記憶ではそれを言ったのはしげだったような気がしたが、しげがそんなふうに思っているんじゃないかと思って、私が代弁したのかもしれない。
どっちにしろ、私もしげもずっと待っているのである。
多分、劇団のみんなでK君を知ってる人はやっぱり待っていると思うのである。
『ゴドー』だね。
このところ、アクセス解析で「日航機事故」「御巣鷹山」「川上慶子」「写真」で検索してくる通りすがりさんが結構いらっしゃって、いささかゲンナリしている。そんな写真、ここにはないぞ。つか、どうしてそんなの見たがるのだ。中にはこれに「美少女」というキーワードまでくっつけて来るやつがいるんで目的はハッキリしてるんだが。
全く、ネットってのは人間の欲望を吸引して肥大していく妖怪みたいなもんなんだなあと、三流SFマンガみたいなことを考えてしまう。
何か事件関係の感想を書くと、必ずと言っていいほど何らかの反応がある。時には何千件ものアクセスがあったりするので、「いや、うちはそういうサイトじゃないし」と困惑することもしばしばだ。ただの日記サイトなんだから、「感想」や「批評」はあっても、「情報」はそんなにない。誤解されて覗かれるのも本意ではないので、最近は事件関係については血なまぐさいのが連発していることもあって、書くのを控えるようにしていたのだ。
ところが、先日からずっとワイドショーの格好のネタになっている「自殺サイト連続殺人事件」、犯人の前上博が、「快楽殺人をテーマにした江戸川乱歩の小説を中学生のころに何冊も読み、影響を受けた」と供述していることがわかって、またもやマスコミの報道の仕方に腹を立てたんで、ちょっとヒトコト言ってやりたくなったのである。
いやね、乱歩についていろいろ言うやつがいるのはもう乱歩の生前からのことでね、正直、今更なのよ。『蜘蛛男』とか『盲獣』とかさ、今度の光文社の文庫全集版まで、「戦前に削除された部分が復活されなかった」、それくらい淫靡で風紀紊乱の罪があるってことで迫害されてきたんだからね。
けれど文学が人間の本質を描き出すことを目的としている以上、闇の部分を見通していくことは絶対に必要なことだ。だからこそ乱歩の描いてきたエロ・グロの世界は、どんなに弾圧されても必ず蘇ってきた。この世の中に「快楽殺人の欲求」を持っていない人間なんて存在しない。そこまで行かなくても、「女の首を締めたい」欲求を持たない男なんて存在しない(そこの彼女、彼氏に「あなたは私の首を締めたいと思ったことある?」と聞いて御覧なさい。もしそこで「ないよ」と答えたらそいつは天性のウソツキだから早めに別れた方が無難ですよ)。宮澤賢治にだってマハトマ・ガンジーにだってそれはある。斉木しげるだって「みなさん、女の首を締めたいと思ったことは?」とコントの中で言っている(おいおい)。
だから我々は乱歩を読み、自らの内なる変態性に向き合いそれを克服する必要があると言える。
それがまあ、テレビの報道の仕方がどうかって言うと、特定の文庫本をズラッと映し出して、いかにもこれが犯罪の元凶であるかのように演出するのだよ(もちろんそんな馬鹿な報道なんかしない局もあったが)。
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08月11日(木)
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