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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■ああ、勘違い/『海野十三敗戦日記』(海野十三著・橋本哲男編)
しかしこの劇団の人たち、結構人数いるのに、一人も「キジムナー」のこと知らなかったのかなあ。映画『ホテル・ハイビスカス』でも名前が出てきてたし、ちょっとでも沖縄のことをかじってたら聞いたことくらいはあるだろうし、結構有名だと思ってたんだけど、沖縄はまだまだ遠いのかね。九州からでも。
今度の芝居に客演していただく予定の草生四葉さんが出演されているので、見に行ったのだが、正直な話、少しばかり期待外れであった。四葉さんご本人は可愛らしかったのだけれど。
芝居の帰り、駐車場から車を出すときに、手を繋いだカップルとすれ違った。
狭い路地なので、しげのヘタな運転ではちょっと引っ掛けてしまいそうな気配だったが、何とかすり抜けて表通りに出ることができた。
「人、撥ねるなよ。ここ狭いんだから」
「そうなんよ。いっつも撥ねそうになるっちゃ」
威張って言うこっちゃない。ふと「カップル」を見ていて、先週の『仮面ライダー響鬼』を思いだした。明日夢の母さん(水木薫)が「アベック」という言葉を使った途端、日菜佳(神戸みゆき)が「あ、アベック?」とむせるシーンである。
で、しげに振ってみた。
「知ってるか? 今はもう『アベック』って言葉は死語らしいぞ」
「え? そうなん?」
「もう『カップル』としか言わないんだろうな。外来語もどんどん英語化されてくよな」
「でも、『アベック』って言ったら、なんか『濃厚な男女関係』って感じがするやん」
「フランス語じゃ“avec”って英語の“with”なんだけどな。『一緒に』って意味しかないよ。“couple”だって、もともと恋人同士を表す言葉じゃないのに。どうして素直に“lovers”って言わないのかな」
「『ラバーズ』は言わんやろ」
「昔は言ってたよ。歌にもあるじゃん。『私〜の〜、ラバさ〜ん〜、酋長の〜、ムスメ〜♪』って」
ここで、しげがしばらく沈黙した。そして急に「ああ!」と叫んだ。
「どしたん?」
「『ラバさん』の『ラバ』って、“lover”の『ラバ』かあ!」
「……そうだけど……。お前、今までどういう意味だと思ってたんだよ」
「馬の『ラバ』」
「……確かに、子供のころならそう勘違いしてたってのも理解できるよ。でも、今の今まで、生まれてこの方30年以上、気が付かなかったってのはどういうこと?」
「意味通じるから」
「通じねーよ! 『私のラバさん』って、なんでラバに『さん』付けするんだよ。それにラバが『酋長の娘』って、ラバがどうして人間の娘になるんだよ!」
「いや、ラバはラバで、別に酋長の娘はいるんだよ」
「意味わかんねーよ!」
※ちなみに『酋長の娘』というのは、1920〜30年代にはやった流行歌である。
「私のラバさん 酋長の娘 色は黒いが 南洋じゃ美人
赤道直下 マーシャル群島 椰子の木陰で テクテク踊る
踊れ踊れ どぶろく飲んで 明日はうれしい 首の祭り
きのう浜で見た 酋長の娘 今日はバナナの 木陰で眠る
踊れ踊れ 踊らぬものに 誰がお嫁に ゆくものか」
日本が南進政策を取っていた時代だから、当時この歌もさぞや大衆の南への夢をかきたてたことだろうが、現代ではとても暢気に歌える歌ではなくなっている。歌そのものは暢気なんだがね。
そんな古い歌をどうして私が知っていたかというと、当然、母が歌っていて覚えたのである。けれど私より十以上若い(はずの)しげがどうして知っていたかはよく分からない。見かけは若いが、あれで戦前から生きてる可能性も捨てきれないのである。
それからしばらく、「意味を勘違いして覚えている歌はないか」という話でひとしきり。マンガ家の中田雅喜さんの娘さんが『花』の「げにいっこくもせんきんの」を「げに一刻堂千金」と勘違いした話とか。
恐らく、若い人の殆どは『仰げば尊し』とか意味も知らずに歌ってるだろうとか、『巨人の星』の「思い込んだら」を「重いコンダラ」だと勘違いしてたってのはヤラセっぽいとか(誰が最初に言い出したのだろう)。
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08月05日(金)
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