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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■政治を笑えば政治に利用されるということ/映画『チーム★アメリカ ワールドポリス』
 確かに、最終的にはチーム・アメリカたちは俳優協会の役者たちを殲滅し、実はエイリアンの尖兵(トレイとマットは絶対に『ゴジラ対ガイガン』を見ているに違いない!)だった金正日も宇宙に追い払うことに成功するのである。だから、町山さんのように、「チーム・アメリカはバカだけどバカなりに一所懸命正義を行っているのであって、戦争に反対する側が売国奴である、という展開になり、後半はチーム・アメリカを全然バカにしないで賞賛したまま終わってしまう」という見方をすることも充分可能だ。
 しかし、チーム・アメリカ(つかアメリカそのものだわな)が自らをDICK(ちん○こ)に例えたのは、まさにあの国の本質がそういう男根的暴力によって支配されていることを喝破しているのであり、決して褒め称えているわけではない。少なくとも日本人で「オレたちみんな、ちん○こ野郎だよな」と言われて感激して同意する人間はそうそういないだろう。なのにアメリカ人の間ではそれが「賞賛」のように錯覚させられてしまうのは、アメリカ人たち自身、自分たちがちん○こであることを「自覚」しているからである。いや、自覚どころか、ちん○こであることに、誇りすら持ってしまっているからである。「ヘイ、オレたちクールでイカしたちん○こ兄弟だぜ、おま○こもケ○の穴もみんなおいらたちがヤッてやるぜ!」って感覚なのだ。
 つまりそれくらいアメリカ人の大半は低脳でイカレた糞ったれどもばかりなのだが、自分がバカであることを誇りにしているバカに向かって「バカ」と言ったところで、堪えるはずがないのである。
 トレイとマットの二人は決して馬鹿ではないが、彼らの誤算は二つあったと思う。一つは、「親ブッシュ派」を「チーム・アメリカ」という架空のキャラクターに抽象化させたのとは対照的に、「反ブッシュ派」の連中を実在の俳優協会の面々に代表させたために、より「反ブッシュ」の色合いの方が濃く出てしまったこと(殺される俳優たちは以下の錚々たる面々。アレック・ボールドウィン、ジョージ・クルーニー、ダニー・グローバー、イーサン・ホーク、ティム・ロビンス、ショーン・ペン、サミュエル・L・ジャクソン、スーザン・サランドン、リブ・タイラー、ヘレン・ハント。一番バカにされているのはマット・デイモンで、自分の名前しか喋れない)。
 もう一つは、「親ブッシュ派」の連中が「チン○コ野郎」とからかわれた程度では屁でもないほどにバカだったとは思いも寄らなかったということだ。「親ブッシュ派」の主流になってるのは反ホモのファンダメンダリストどもだが、実は他人のちん○こくらい喜んで舐める連中で、そのことを映画の中で指摘されても気づかないくらいに脳が腐れているのだ(そういうシーンがあるのである)。やつらを怒らせるくらいに馬鹿にするためには、「チーム・アメリカ」という衣装は“アメリカでは”まだまだカッコよすぎるのだろう。
 まあ、我々日本人であれば、チーム・アメリカを見てかっこいいなんて思うことはまずない。アメリカに在住している町山さんから見ればこの映画は「親ブッシュ」に傾いて見えるのだろうが、我々から見れば「親ブッシュ」も「反ブッシュ」も「所詮はみんな同じアメ公」であり、「こいつらみんなただの既知外じゃねえか」なのである。
 だからこの映画は、「アメリカ以外の人間にとっては」、既知外と既知外が互いを罵倒し中傷しFUCKし殺戮しあうとんでもなくアナーキーでスラップスティックな映画なのであり、この世界の警察を任じているやつらが本質的に狂っているという、笑えない冗談のような現実がまかり通っている恐怖を描いている作品なのである。

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07月31日(日)
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