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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■壊れていく定め/『画図百鬼夜行全画集』(鳥山石燕)
父と姉との軋轢も、必ずしも父の主張を鵜呑みにすることはできない。父が姉に「店を譲る」と言ったのは、母が急死して、父がショックを受けていたころのことである。現在父は、「あのころのオレは自暴自棄になっていてモノを考えられなかった」と過去の自分を否定するのだが、私から見ればそのころの父の方が今よりもよっぽどモノを考えている。今の父は、もしかすると姉に店を継がせることを約束したことすら忘れかけているのかもしれない。
父と暮らす家を探す前に、父を入れる病院を考えないといけなくなるのだろうか。父はもう四分の一ほどは私の父ではなくなっている。しかし、その喪失率がどの程度になれば「見切り」をつけることになるのか、明確な基準のあることではない。完全に「私の父だったころ」の父は、「俺がボケたら遠慮は要らないから施設に叩きこめ」と言っていたのだが、いざ自己喪失してしまったら泣き出してしまうかもしれない。脳梗塞で倒れた祖父(父の父)が私と会うたびに涙を流していたのを思い出した。
私の方が先にボケる可能性だってあるし、決断は意外に早く来るかもしれない。
マンガ、新沢基栄『フラッシュ奇面組』3巻(スクウェア・エニックス)。
二年ぶりの新刊。作者の腰痛による休載はファンにはもう周知の事実なので、もうわずか10ページだろうと掲載されていれば嬉しいという状況。良くぞ3巻が出てくれた、と感激である。
だからと言ってマンガの方が面白いかというと、十年一日というか二十年一日で、新しいものは何もない。「先生が生徒にメシをたかりに家庭訪問に行くが、かえってひどい目に合わされる」とか「キャンプで仲間とはぐれてサバイバル」なんてネタ、これまでどれだけあったことか。しかも、そこで展開されるギャグも殆ど破天荒なものがない。前者なら空き巣と勘違いされるとか、後者は熊に襲われるとか、「どうしてこれで面白いと思えるのか」と作者に問いかけたくなるくらいにありふれすぎている。なんかねー、『奇面組』よりも更に十年くらい古い永井豪の『ハレンチ学園』や『キッカイくん』にも家庭訪問ネタやサバイバルネタがあったけど、そっちの方がまだSFが入ってる分、面白かったりするのよ。つまり、かつての『3年奇面組』も『ハイスクール!奇面組』も、『少年ジャンプ』に連載されていた当時ですら、そのギャグはかなり古かったのだ。これが新人マンガ家の持ち込んできた原稿だったら、絶対にボツを食らってるだろう。
ところがオビには「あるある探検隊のレギュラーも推薦ッ!! 『おもしろすぎて西川くんが気失ってもたぁ〜!』」とか書いてあるんである。何かのギャグを「面白い」と評することは、即ち自分のギャグセンスがその対象と同程度だと言うのを告白するのと同じであるから、レギュラーのギャグはまさに20年、30年昔のそれだってことになる。この推薦、レギュラーにとっては自殺行為じゃないかと思うんだが、でも、レギュラーがこのあと「あるある探検隊」で何年も持つとは誰も考えていないだろうから(別のギャグを考え出してもたいして変わるまい)、これはある意味、実に適切な起用のようにも思える。まあ、レギュラーが『奇面組』の推薦してることに気づく人自体少なかろうから、何の影響もないかもしれないのだが。
ギャグセンスも変化なしなら、作中で描かれる風俗もあくまでジャンプ連載当時のものだから、零君たちはケイタイも持ってはいない。いや、一番気になってたのは天野邪子率いる御女組だけれども、やっぱり昔と変わらないロングスカートだ。若い人たちが見たら「このひとたちどーゆーひと?」としか思えないのではなかろうか。
これだけ「変わらない」のであれば、今後この作者に何か新しい境地が生まれるとは思えない。人に勧められるマンガでは決してないのだが、これを「骨董品」的な面白さとして楽しむ向きには貴重であるかもしれない。それで、たとえ単行本刊行に二年の間が空こうと、やっぱり買ってしまうのである。
鳥山石燕『画図百鬼夜行全画集』(角川ソフィア文庫)。
『妖怪大戦争』映画化の余波で、こんなものまで文庫化。
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07月28日(木)
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