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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■いつものことだけど/映画『劇場版 鋼の錬金術師 シャンバラを征く者』
 しげは興奮してドーパミン出まくりである。水着とか何も持って来てなかったのに、無理やり私を波打ち際まで連れて行く。たかが海水浴だってのに、何でこいつ、こんなに嬉しいんだ。仕方なくズボンの裾をまくり上げて、足を入れる。水は適度に冷たく、砂は足をさらさらと撫でて、確かに気持ちよくはあった。けれど波は意外に勢いがあって、まくり上げてもあまり意味はなかった。しっかり膝のあたりまで濡れてしまって、えらい目に遭う。細川嬢は打ち寄せる海草が足に当たって、気持ち悪がっている。
 「これ、わかめですか?」
 「そうだよ」
 「これは?」
 「それはミル」
 「えっ! 怖い!」
 「いや、『ミル』って名前の海草」
 「あっ、なーんだ」
 なんかどーぶつの死骸か何かと勘違いしたらしい。海草だと分かってからは安心したのか、ミルの塊をつまんでぶら下げて遊んでいる。
 ふとしげを見ると、足を入れるどころか、全身、ずぶ濡れになっていた。
 「下着じゃん、お前!」
 キャミソールみたいな感じの下着だから、一見、水着に見えなくもないのだが、濡れれば当然、透けてしまうのを防げない。
 細川嬢も「透けてますよ!」と狼狽する。本当にまあ、あれがああなっているのだ。なのにそんなことを気にもせず、しげは「あはは、あはは」と笑っている。もう脳のネジが捻じ切れているのだ。
 海水浴場は結構な人ごみだ。あまり長居はできないと、まだ名残惜しげなしげを追い立てて、車に戻る。
 しげ、下着はもう着ていられないので、全部脱いで上着だけを羽織る。なんかもう、人の目なんてどうでもいいとばかりに、しげ、更衣室にも行かずに、車の陰で下着を脱ぎ始めるのだ。慌てて細川嬢、前に立ちはだかって、タオルをかざして隠そうとするが、どうしたってはみ出て見えるのである。気がついた客もいたんじゃないかなあ。何とか着替えたが、上着を羽織るといっても薄いカーディガンみたいなやつなので、前で結んでムネを隠すのが精一杯だ。半裸と言ったほうが正しいような格好である。下は当然、スカートをはいただけでノーパン。 
 細川嬢を送って、そのあと帰宅するまで、しげはずっとそのままの格好だった。全く、職質でもされたらどうするつもりだったのか。イカレたやつは何をし始めるか予測がつかないのである。
 ふっくたびれて夜まで爆睡。


 夜、AMCキャナルシティ13で、映画『劇場版 鋼の錬金術師 シャンバラを征く者』。
 なんとAMCで一番大きな劇場での公開である。前売り券がいかに売れていたかが分かるね。公開二日目のレイトショーだが、客席はまあ五十人程度の入り。劇場が広い分、随分閑散とした印象である。一人か二人で来て入る男のオタクは見かけるが、結構「普通っぽい」カップルの方が目立つ。腐女子っぽい女の子たちもそんなにはいない。
 一見、予想外のようであるけれども、前売り券買ってるオタクや腐女子が1000円興行のレイトショーなんか利用するはずがないのだ(リピーターとして来るとしても来週当たりからだろう)。実際には腐女子さんたちは昨日と今日の昼間に大挙して押し寄せていたのだろう。それがどれくらいであったかは、売店でパンフレットはおろか関連グッズが殆ど完売していたことでも見当がつく(エドのコートまで売れてたよ)。パワーあるよな、若い連中は。
 パンフだけは必ず買うようにしているので、カウンターのねーちゃんに「追加はいつごろ入荷しますか」と聞くと、ニベもなく「分かりません」と返事される。多分、同じ質問を嫌になるほどされてるんだろう。ジュース(Lサイズ)を頼むと、いつもは「ストローは2本差しますか?」と聞かれるのが、無言で1本だけ差されて渡された。Lサイズを頼んどきながらストローを「1本でいいです」とサビシク答えてたやつらが多かったのかな(笑)。『電車男』のヒットにも関わらず、オタクのシングル率は未だに高いのかもしれない(推測に留めておきます)。

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07月24日(日)
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