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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■チェーン店も消える/映画『バタフライ・エフェクト』
結局、「過去を変える」という時間SFの定番ネタなんだが、その手の作品をたくさん読んだり見たりしてきた人には「今更」感が強いだろう。それに、小説と違って映画だから詳しい説明が省かれてしまうのは仕方がないのかもしれないが、タイム・パラドックスの問題があまり深く考えられていないのが気になってしまう。
エヴァンは過去を変え損なっては再び時間軸を遡るのだが、一本目の時間軸と次の時間軸が同じものなのかそうでないのか、そこが判然としていない。普通に考えれば“過去が変わってしまっている”のだからそれぞれの時間軸はあくまで別のもので、たとえエヴァンが過去を変えたつもりになっていても、それは本人が枝分かれした別の時間軸に飛び込んだだけのこと、「過去を変えることができた」とエヴァンが思っているのはただの自己満足に過ぎないのである。もともとの時間軸では、ケイリーはあくまで死んだままだ。だからそんなことに気づきもしないであっちこっちの世界を行ったり来たりしているエヴァンは底抜けの馬鹿にしか見えない。主人公に感情移入ができないから、全編、不快感が続くばかりでちっとも面白く見られないのである。
パンフレットではSF作家の梶尾真治氏が本作に影響を与えたと思しい先行作品を挙げているが、殆どラストシーンの演出がそっくりそのままな、アノ時を駆けちゃう日本映画を挙げないのはどうしてなのかなあ、と思っていたのだが、どうやら梶尾さんが見た本作と、実際に公開された映画とはラストが違っているらしいのだ。
これは二者を比較しなきゃなんないからもうあえてネタバレしちゃいますけど、劇場公開版はエヴァンがケイリーと出会うこと自体を回避して運命を変えて終わるのに対して、ディレクターズ・カット版はどうも創世記にまで遡っちゃうみたいなんですね。そこまでせにゃあ、運命は変えられんものだったのかとちょっとオドロキだけれども、無難でありふれた終わり方しちゃった公開版よりも、そっちのほうがトンデモでかえって面白かったかもしれない。テレビ放送するときはぜひ、オリジナル版のほうを放送してもらいたいものである。
05月26日(木)
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