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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■彼女がウェディング・ドレスに着替えたら/映画『犬神の悪霊(たたり)』
冒頭、クレジットシーンは延々と洞窟の中を映し出し、そこに菊池俊輔のテーマソングがかかる。いかにも70年代のチープなホラー映画の雰囲気、というか、太鼓と女性の悲鳴めいた合いの手の組み合わせで、土俗的なムードを強調している。このシーンを見れば、たいていの観客は、当然のごとく、「ああ、これはやはり土俗的なオカルト映画なのかなあ」と思うだろう。私もそう思った。
音楽とクレジットが終わっても、洞窟のカットがもうちょっとだけ続く。その出口の映像が唐突に切れ、主人公たちがジープに乗って登場。出口の映像はジープが出てくるトンネルの映像にかぶるのだが、この編集の仕方がいやに雑だ。このあともカット尻が余ったり足りなかったり、編集の下手糞さがこの映画はやたら目立つ。かなり急いで作られた映画なのだろうか。
それはともかく、ジープに乗っていた主人公の加納竜次(大和田伸也)は、東亜開発のウラン技師という設定で、仲間の安井(畑中猛重)と西岡(小野進也)と共に、ウラン鉱発掘のためにこの久賀村へやって来ていたのである。ここで、村の子供たちが「ジープだ! ジープだ!」と言って駆け寄ってくるのが進駐軍に群がるガキんちょどものようで、いったいいつの時代設定やねん、と思ってしまうが、もちろんこれは昭和52年当時という設定なのである。子供たちはめいめいに鬼の面とか付けてるが(これも一応伏線のつもりか)、いくら因習の残る村とは言え、既に違和感はありまくりである。
ウラン鉱はあっという間に発見され、喜び勇んだ帰り道、西岡が車の運転に失敗して、小さな祠を壊してしまう。それを怒ったのか、ジープの前に吼えまくる犬が飛び出してきて、これが当然のごとくに撥ねられて死ぬ。犬の飼い主の少年・勇(加藤淳也。後にアニメ『龍の子太郎』で太郎の声を当てる子役)が飛び出してきて、竜次たちをギロリとにらむ。この視線が怖くて、観客の誰でもがここから「呪い」は始まるのだなあと予測する。
ところがここでシーンはいきなり転換、山中の滝つぼで、三人は水浴びをする二人の全裸の女性を覗き見る。これが本編のヒロインたちで、垂水かおり(山内恵美子。加山雄三主演のテレビドラマ『高校教師』で坂本紀子を演じていた超美人女優さんである。そうと知っていれば、当時絶対見に行っていたのに!)と剣持麗子(泉じゅん。若い人にはこれも説明が必要だろうが、山口百恵似の、美人系とかわいい系の中間の顔立ちで、しかも巨乳でポルノに限らず普通映画でも堂々と脱いでくれていたので、70年代の男の子にとってはかなりアイドル的な人気を博していた)。
唐突なサービスシーンであるが、ドラマ上の必然性はない(笑)。木の上から覗いていた竜次が滝つぼに落っこちるという、この映画唯一の“意図した”ギャグシーンがあって、これがストップモーションになる。次のカットはいきなり半年後、竜次と麗子の結婚式のシーンになる。大和田伸也、手が速っ!。格さん役のときは堅物だったくせに。
けれど、竜次の顔にいきなり石をぶつけた少年が。これが勇で、実はかおりの弟だった。垂水の家は「犬神統(いぬがみすじ)」として村人たちから忌み嫌われており、かおりと麗子は親友ではあったけれども、かおりは結婚式には呼ばれていなかったのである。竜次と麗子を乗せた車にかおりは追いすがるが、車は無視して去っていく。親友同士の悲しい別れだが、二人の悲劇はこれが始まりに過ぎなかった。このあたりはまあ何とかホロリとできなくもない展開である。
異変が起きたのは、東京での結婚披露宴で、スピーチに立った西岡が、突然狂って暴れだしたのである。そのあと、ビルの屋上から飛び降りて自殺。更には安井が、都会の真ん中で野犬の群れに襲われ、食い殺される。こんな突拍子もない展開があれば、観客がみな、この映画の中では「犬神の呪い」は実在するのだな、と判断するのは自然の流れだろう。
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05月03日(火)
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