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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■続く事故(ヒビキのタイトル風)/『ビジュアル探偵明智クン!!』1巻(阿部川キネコ)
タイトルから分かるとおり、お話は名探偵もののパロディ。でも主人公の明智くん(下の名前は不明)はオリジナルの明智小五郎とは何の関係もない。まあナルシストってところは似てるかもしれないが、やたらと脱ぐわコスるわ、鬱陶しいったらありゃしない。探偵になる以前の過去は謎に包まれているが、路上詩人だったことがあるとか。もちろん詩の中身は独りよがりで芸術家気取りで、でもリリカルという一番困ったタイプ。「レモネード色の街に一人ぼっち……」ってどんな街や。黄砂、降り積もっとるんか。桑田さんがなんでこんなのが好きなのかよく分からないのである。
依頼人だった山村美々(通称みっちょん)をなし崩し的に助手にして、数々の何事件に挑む! というのが基本的なストーリーラインだけれど、もちろんマトモなミステリマンガのはずもなく、次から次へと現れる変な探偵仲間が、事件を逆に紛糾させていく。不思議ちゃん探偵悪梨須(アリス)はただのストーカー、自称明智くんのライバル金田一くんは霊視ができるパンク探偵、陰陽探偵京極院晴明はモロあの人。
しかし極めつけなのは何と言っても「横溝ドイル」くんだろう。“体は大人(33歳)、心は子供”、つまりはただのアダルトチルドレン(つかとっちゃんボーヤ)で、女と見れば“ぶって”擦り寄るあたり、キモいったらないのだが、オリジナルだって子供の演技してるときは気色悪いんだからどっこいどっこいだろう。たまたま出かけた先で必ず事件が起こる「地獄の探偵」ぶりもオリジナルと同じ。オリジナルの腐れぶりに腹を立てている人にとっては、毎回エロ行為に走ってみっちょんにぶちのめされるドイルくんは、すこぶる溜飲の下がるキャラだろう。ちゃんと「眠りのドイル」を見せてくれるところも芸コマである。
作者の阿部川さん、『辣韮の皮』でもチラッとそのミステリオタクな面を見せてはいたが、実際、かなり内外のミステリを読み込んでるんじゃなかろうか。明智くんがボソリとつぶやく「ああ……ドラマ化しないかな……あの探偵事務所がうらやましい」という台詞、もちろんこれは関崎俊三『ああ探偵事務所』がドラマ化されたことを指しているのだが、同時に江戸川乱歩『二銭銅貨』の冒頭のフレーズのパロディにもなっている。こういうミステリファン向けのくすぐりも多く、某有名推理作家のデビュー作の「見えなかった」オチや、理系人気作家の「回転する館」オチに対して、「なめんなよミステリー」と突っ込んでるのも、同じ思いを抱いているファンにとっては小気味よく感じられることだろう(私はアノ二作ともアリだと思ってるんですが)。
04月30日(土)
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