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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■安達祐実は30代を演じる夢を見るのか?/『原作完全版 魔法使いサリー』(横山光輝)
 それはさておき(まだ本題ではなかったのである)、驚いちゃったのは、今度のドラマ化が「前作『積木くずし』も含んだ上でのドラマ化」だったことだ。つまり現在23歳の安達祐美は、穂積由香里さんの「13歳から亡くなる35歳までを演じる」ことになるのである。
 普通、こういう場合は「十歳も年下の役を演じるには無理があるだろう」と考えるほうが先に立つもんだろう。年を上に見せるのはメイク一つで何とかなるが、年下に見せるのはかなり難しいからだ。舞台なら私も八十歳の杉村春子や森光子が十代の少女を演じるのを見てきたが、これは舞台が「見立て」の芸術だから成立することだ。基本的に現実と近接している映画ではなかなかそういう例はない。たまにあるものは目も当てられないものが殆どである。某映画で40代の岩下志麻のセーラー服を見たときには石を投げてやりたくなった。
 しかし、安達祐実の場合、心配なのは全くの逆で、「どんなに老けメイクしても35歳の役は無理なんじゃないか」ということなのである。毀誉褒貶激しいが、私は安達祐実という女優の演技力は、決して『家なき子』や『ガラスの仮面』程度で計れるものではないと思っている。いや、それなりに上手い子だと思ってはいたが、特にそう感じたのは、『いつ見ても波瀾万丈』や、黒田アーサーとの熱愛報道で追いかけられていたときの「普段の顔」の時の「演技」が素晴らしかったからで、ああ、こういう“演技をすることに屈託のない子”は、育てりゃ確実に伸びる、と思ったのである。
 正直、あの童顔と身長の低さが幅広い役を演じるのにはネックになっているが、逆にそれを武器にして、必ずしも主役にこだわらずにちょっと変わった役を演じさせれば、かなりハマるものもあろうかと思うのである。
 『積木くずし』のヒロインも、『家なき子』の延長線上に含まれる役どころで、安達祐実なら楽に演じられるだろうと思う。しかし、ヒネた見方をすれば、ああいう不良少女の役は、そこそこの役者なら誰でも演じられるのだ。別に蒼井優でも石原さとみでも市川由衣でも上戸彩でも上野樹里でも香椎由宇でも加藤夏季でも栗山千明でも酒井彩名でも沢尻エリカでも鈴木杏でも長澤まさみでも平山あやでも深田恭子でも藤谷文子でも前田愛でも本仮屋ユイカでも桃井はるこ(笑)でも構わない。あびる優なら旬だ。この「別に安達祐実がやらなくても」感が強いのが、今の安達祐実の弱点だと思う。
 それに言っちゃなんだが、この手の「実録非行少女」ものは製作者の意図はいざ知らず、受け手は殆ど興味本位、少女の常軌を逸した暴力なんて対岸の火事で、「まあ、なんてひどい親ざんしょ、うちの子はあんなふうに育たなくて、よい子に育ってくれて、嬉しいわ。これも私の教育のたまものよねえ。おほほほほ」と自己正当化の材料にしているに過ぎない。そして本当に家庭崩壊してしまっている家は、「あの程度で不幸ぶるな」と見向きもしないだろう。所詮は他人の家の出来事なのである。そんな企画のドラマにいくら出たってキャリアになろうとは思われない。かと言って、朝の連ドラとか大河ドラマとか火サスとか土ワイとかミニシリーズとかにチョイ役で出たって、すぐに忘れられる。ここはやはり自分の役に合った「映画」にドンと出てほしいのだけれど、いかんせん、今のひ弱な映画界では、いったん色の付いた役者をもう一度洗いなおすだけの底力がないのである(だから新人が出ては消えを繰り返しているのである。上戸彩もいつまで持つか)。必然、安達祐実はどうでもいいような無駄な仕事ばかりこなすハメに陥っているのだ。もったいないったらありゃしない。私ゃ安達祐実は「タンスにゴン」の沢口靖子みたいな三のセンを狙っていったほうが一番いいと思ってるんだけど、誰かプロデューサーに進言してくれないか。いや、ムリだろうけど。


 夜、8時ごろ、父から電話がある。
 ちょうど寝入りばなだったので、ムニャムニャしながら受話器を取ったが、向こうは息せき切ったように慌ててこう言った。
 「今晩、11時に地震が起きるげな。知っとうや?」
 「はあ?」

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04月26日(火)
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