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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■じじじじじじじじ地震!(追加アリ)
にもかかわらず、意外に見ていた人が少なくて、これが知る人ぞ知るシリーズになっているのは、当時の裏番組がNHK大河ドラマの『源義経』だったせいが大きいと思う。視聴率が10%半ばというのは、当時としては決して高い数字ではない。、客商売だったうちでも、多分ずっとチャンネルはNHKに合っていたはずで、私も『泣いてたまるか』は一本も見たことがないのである。そういうライバルに苦戦した番組ではあったが、二年半の長期に渡って続いたのは、やはり「渥美清」という役者の魅力をテレビ局も制作スタッフも買っていたからに他ならないだろう。全54話、渥美清が全て違うキャラを演じ分けるというとてつもないシリーズで、彼が決して「寅さんだけの役者でない」ことを知ることができる。つか、知れよみんな。いやホント、私は『寅さん』だけで渥美清を語る人とは、ファンであろうとなかろうと口を利きたくないくらいである。
第一巻は、第一話『ラッパの善さん』と第三話『ビフテキ子守唄』の二話を収録(収録順は必ずしも放映順ではない)。善さんが「戦時中のラッパ兵だった」というのは、昭和40年代だったら特に説明しなくても、戦時中、彼が新兵としてこき使われていたことを意味するのだとすぐに理解される設定であった。善さんは今はタクシー会社の下っ端、というキャラクターだけれども、この時代、学園ものの用務員さんなど、ドラマや映画にはやたら「元ラッパ兵」が登場していたのである。「戦中も戦後も一介の庶民」を象徴するのに「元ラッパ兵」の設定は適切であった。酔っ払って泣きながら、真夜中にラッパを吹き鳴らす迷惑至極な善さんに対して、視聴者が決して腹を立てることがないのはまさに「ラッパ兵」に対する同情と共感をこの時代の人々が持っていたことの証左であろう(このとき怒ったミスター珍に追いかけられて「身をかわす」渥美清の敏捷かつキレのいい体技を見よ!)。
脚本家はもう説明するのも野暮な、『張込み』以下の松本清張作品で有名な野村芳太郎、監督は『ウルトラQ』で『カネゴンの繭』『育てよカメ』『鳥を見た!』など、ファンタジー色豊かでありながら生活感とナンセンスも同時に表現するという稀有な作品群を残した中川晴之助。解説書には脚本家や監督のフィルモグラフィーなどが書かれていないが、これもきちんとフォローしてほしいところである。
昨年DVDボックスが出たばかりだが、いきなりこんな形で発売というのは、ボックスがあまり売れなかったということなのだろうか。だとしたらこんな残念なことはない。隔週刊だから、一月四千円弱でシリーズが揃えられるのである。かなりお得なお値段だと思うのだが。

 続けて居間で寝っ転がったまま、DVD『鉄人28号』を見ていたのだが、その最中に地震が来たのである。
 はじめ少しグラッとしたな、と思ったのが途端に強い縦揺れが来た。天井の蛍光灯が大きく揺れ、積み上げていた本の山が両脇から雪崩を起こして私の上に降ってくる。棚の上からはビデオや本が本棚から吐き出されるように飛び出してくる。その様子をしっかり目の当たりにしながら、揺れが激しくて立ち上がることもできない。動けはしないが、動けないと分かるとかえって肝は座るもので、「この程度の揺れで収まるなら、何とか命は助かるな」「これ以上揺れが激しくなってドンと来るようなら、もう諦めて死ぬしかないな」という境界線も見えてくる。だもんで、本やビデオ、CDの類の一部は、目の前をかすめて落ちてくるのだが、それをよける程度の心の余裕は生まれるのである。
 隣室でどだだだだと山崩れの音がして、しげの「きゃー」という悲鳴も聞こえるが、助けに行ける状況ではない。ケガをしていないことを祈るだけである。

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03月20日(日)
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