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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■Everybody "moe"Somebody
 候補に上がったのが「メイド・コスプレ」「アキバ系」「萌え」ってことだけれども、「なんで今更これが」って印象と同時に「これで今年の流行語を代表させるっていうのはどうか」という両方の疑念が生じてしまう。
 まず「メイド・コスプレ」ってセットの仕方、記事にも書いてあったけど、「メイドのコスプレ」のことなのか、「メイドとコスプレ」のことなのか、よく分からない。オタクならこんな使い方しないだろうから、選定した人間もあやふやな情報で何となく選んだんじゃないかっていう感じだ。「アキバ系」だって東京中心で、全国規模な用語じゃないし、これを流行語と言っていいものなのかどうか。
 唯一「萌え」ってのがかなり男女、年齢差をある程度は越えて、広範囲に渡って使用されるようになっているから、これなら「流行語」と称してもいいように思えるが、実は「萌え」の概念も数年前と比べると全く変質してきている。ナンシー関あたりが気持ち悪がってたころのようなオタク特有の感情移入の仕方と違っていて、「好き」と置換可能なくらいに薄く使われるようになっているのが実体である。だからこそ、10代の、特にオタクではない男の子女の子が普通に抵抗感なく「○○○○萌え」と使えるようになっているのだ。私などは未だに椎名へきるあたりに「萌え萌え〜!」とか言ってた気色悪い風景の印象が強いから、聞くたびに「引いて」しまうのだが、もう若い子はこんな「重ね語」は使わず語尾も上げず、「萌え」と簡単に使っている。こうなるとこれはもう「オタク用語」とは言えず、今後かなり長く生き残っていく可能性も否定はできない。いや、もしかしたらそのうちこれがもともとオタク用語であったことすら忘れられ、10年後くらいの広辞苑には「萌え」の項が立てられているかもしれないのだ。でもそれは「コトバ」自体に浸透力があるかどうかの問題なのであって、痛いオタクまでが「自分の存在と力が社会的に認知されつつある」と判断するのは大いなる勘違いだと言えよう。『トリビアの泉』が受ける現代、今や一般人はみな「ウスいオタク」なのであって、「濃い(と自称するだけで、もうそんな存在はあり得ない)オタク」との溝は、実はかえって深く広くなっていると言えるのである。
 大賞の発表は12月1日だそうだけれど、どんな結果が出ても多分、?マークが頭上を飛び交うことは間違いないところだろう。


 フィリップ・K・ディックの映画化がまた一本。短編『ゴールデン・マン』を『トータル・リコール』のゲイリー・ゴールドマンが脚色、『007/ダイ・アナザー・デイ』のリー・タマホリが監督する予定の『ネクスト』で、主演はニコラス・ケイジ。ハリウッド映画ファンならばまあ期待とかしちゃうのかもしれないけれど、ディックファン、SFファンからは見事に総スカンくらいそうな布陣である。実際、見たいと思うかよ、そこのSFファン。
 ディックがこれほど人気原作者になるとは、とても20年前には考えられなかった事態だけれど、SFファンの目から見れば最初の『ブレードランナー』を除いて駄作凡作を積み重ねてきた20年でもあったわけで、それにまた一本が加わっても、ファンは「もうやめてよ」か、もっと白けた顔で「どうにでもしな」で終わってしまうような気がしてならない。いやもう前回の『ペイ・チェック』が既にそんな扱い受けてたし。
 これも前項の「オタク」の話と重なるが、「SFファン」というものもとうに絶滅しているのであって、“センス・オブ・ワンダー”なんて、若い「自称SFファン」に語っても、もう何のことやら分からない。客は別に映画にSFを求めちゃいないのである。

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11月17日(水)
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