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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■だから鬱になってるヨユーなんてないんだって/『鋼の錬金術師 シナリオブック vol.1』
ただし、「連絡を取らないで下さい」と書いたのは、残りの1分、しげが改心する可能性をそれだけは残しておいたからである。これは「少し時間をくれ」というPPのみんなへの「腹芸」だったのであるが、それに気が付かずにすぐさま「どういうこと?」とメールを送ってきたのが若干名いた(^_^;)。全く、行間を読むことができないヤツラである。
メールの返事はほったらかしといて、しげに詰め寄る。
「仕事もやめるなら、挨拶に行こう。一人で行けないなら、オレも付いてって、一緒に頭を下げてやる。ウソついて仕事休んでばかりですみませんって謝ってやる。劇団のみんなにもちゃんと謝ってまわれ。それくらいのケジメは付けれるな?」
「……」
「返事せんか。もうみんなにはメール送ったんだから、これからどうするかは決定したろうが。いったん『行けない』って連絡入れたら、もうあと戻りはできないんだろ?」
「……」
……まあ、このくらいの「ほのめかし」ではしげは私が何が言いたいかはわからない。
「さっき、仕事に行けって言ったとき、『もう、一度“行けない”って言っちゃったから、訂正はできない』って思ったんだろ?」
「……」
『黙っとったってわからんやろうが。なんで自分の意志なのにはっきり言えんとや。結局、おまえは何がしたいとや?』
「……」
「したいことはないんか」
「……芝居がしたい」
「聞こえん」
「芝居がしたい」
まだ全然か細い声だったが、泣いてはいなかった。
「仕事はどうするとや」
「行く」
「なら、店に電話してこい」
しげが電話している間に、私は劇団のみんなに「お詫び」のメールを送った。
> 先ほどは、突然の内容のメールでご心配をおかけしまして申し訳ありません。
> 実は、女房がまた鬱になってしまい、仕事もここんとこずっとサボリ、今日も病気だとうそついて休もうとする、当然、収入がないからパピオの使用料も払っておらず、私からも既に七万円借りたままで返す当てもない、いったいこれからどうするつもりなのか、問いただしてみても返事もしない、もうどうしようもない状態になったので、これはとても芝居がやれる状態じゃないと思って、PPのメンバー全員に先ほどのメールをお送りしたのです。
> メールを送っている間、情けないことに女房は私を止めようともしませんでした。
> そのあと、「言いたいことも言えんで芝居やろうなんてふざけたこと言うな!」と言ったら、ようやく「芝居やりたい。仕事も行く」と言い出しました。
> みなさんご存知の通り、女房は心の病気で意志薄弱です。優しくものを言っただけでは、自分で決断せずにすぐに逃げようとします。一旦は追い詰めないと、ちゃんと返事させることもできなかったのだとお察し下さい。
> 予定通り公演は行いますし、明日の練習もありますが、女房はこういう感じでいつまた鬱になって逃げようとするかわかりません。キャスト変更も含めて、どうしたらいいか、みんなで相談した方がいいと思います。明日はそういう話もしたいと思いますので、お見えになれない方もご意見をお寄せ頂けると有り難いです。
正直、しげのキャストだけは変えてしまいたいのだが、ほかにやる気のあるやつがいないのである。と言うかよ、やる気ないヤツが揃ってるのに、劇団維持する意味なんてないってホントに思うんだけどねえ。しげが「今度の公演で引退する」って宣言したあとも、「じゃあ自分が引き継いで」って言い出したやつは現れなかったし。
私は芝居が好きだ。好きなのだが、だからこそ本気で芝居が好きでもないやつと組んで公演を売ってく気なんて、サラサラない。今度の芝居を最後に解散してしまっても構わないと思っているのである。
『TVアニメ 鋼の錬金術師 シナリオブック vol.1』。
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09月25日(土)
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