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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■孤独な狂気の果てには
 今やうちの職場にトンガリさんの味方は誰一人いない。その「黒いウワサ」を私に教えてくれた人は、最後に残っていたトンガリさんの唯一の友達だったのである。ついにその人からもトンガリさんは見捨てられてしまったのだ。
 単に狂っているだけなら罪ではないと思う。けれどその狂ったアタマで不正を働けばそれはやはり罪だ。相変わらず、トンガリさんの目は宙を泳いでいて、どこを見ているか分からない。だんだん私も「この人辞めてほしいなあ」じゃなくて、「辞めさせるべきなんじゃないか」という気にすらなってきたのだが、いくら訴えても未だに上司は何の対処もしない。つまり、仕事上のお付き合いはまだまだ続きますよ、ということなのである。なんでやねん。なんだか本当に誰ぞの弱み握ってるんじゃないかって気がしてきたよ。
 尿に糖がまた出たって、そりゃストレス溜まるのも当たり前だっつーの。


 帰宅してWOWOWで映画『怪人二十面相』(1954・松竹版)三部作を見る。
 これが二十面相シリーズの最初の映画化だけれども、原作の『怪人二十面相』『少年探偵団』の筋を、概ねなぞってはいる。もっとも原作が発表されて20年近く経っているために、戦後の状勢に合わせて二十面相が狙うものが原子力開発の設計図ということに改変されている(そのくせ、二十面相はあとで「実は別にそんなものほしくはなかった」と述懐するのだからヘンな話である)。
 まあ、低予算の添え物映画なので、お世辞にも出来がいいとは言えないシロモノ。二十面相の素顔が太い眉にメバリが入って右頬にでっかいホクロって、いったいどういうセンスなんだろね。しかもこの二十面相、明智小五郎に変装してもちゃんとホクロは残っているのである。なんじゃそりゃ。
 でも、ワキの役者はすごくいいんだよねえ、羽柴博士に山形勲、大鳥宝石店の主人に日守新一、中村警部なんて、須賀不二男だよ! なんて役者のムダ使い。つくづく低予算なのが惜しまれることである。
 見終わった途端に、東京のグータロウ君からメールがある。「『怪人二十面相』見たぞ!」……同じときに同じようなの見てんじゃないよ、もう(^_^;)。


 作家・種村季弘氏が8月29日、胃がんのため死去。享年71。
 澁澤龍彦さんも、松田修先生も亡くなって、ついに種村さんまで。
 幻想文学、異端文学を評価してくれていた「大家」が、これでもう殆どいなくなってしまった。
 悲しい。

09月02日(木)
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