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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■悲しい知らせ
 久しぶりに妙ちくりんな夢を見る。
 しげと映画に行く約束をして、映画館の前まで行くのだが、急にしげが倒れて、「私のことは構わないからあなただけ一人で映画を見て」と青息吐息で言い残し、救急車に乗せられて運ばれて行く。けれどもチケットが一枚余っているので、一人で見るのももったいないと、鴉丸嬢を誘ってみたのだが、「今、三頭身だからダメなの」と断られた。三頭身ならしょうがないよな、と一人で映画を見たのだが、よく考えてみたら、三頭身だとどうして映画が見られないのか、理由がよくわからない。つか、あの子は時々三頭身になってるのか。ちなみにその時に見にいった映画は『ダイ・ハード』だった。


 忙しさが倍増中。
 ここしばらく、炎天下での仕事が続いているので、体力の消耗がいつになく激しい。さらにもう二つ三つ、並行してやらなきゃならない仕事も控えているので、それの準備も重なって、休憩するヒマもない。昼飯だって食ってないんだからね。
 だいたいこの時期になると決まっていきなり倒れてリタイア、という人が増えるのだが、既に今年も同僚が一人入院していて、肩代わりの仕事を頼まれたところなのである。そもそもウチの職場、安月給のわりに労働条件が苛酷だってこと、も少し上の連中にも考えてもらいたいものなんだがね。この6年間、労働時間は変化してないのに給料上がってるどころか減ってんだからな。余計なところに予算使ってるの切り詰めれば、もちっと人件費上げられると思うんだが、なんか余り工夫してるような様子見られないしなあ。
 いや、私の給料増やせとは言わないから、新しい人あと三人雇ってよ(+_;)。


 しげの鬱が治って、なんとか仕事に復帰することになったことは最近の日記にも書いたことだが、以前ほどの苛酷なスケジュールではなくなったことは、私にとっても、ありがたいことである。おかげで私の仕事帰りに、車で迎えに来てもらいやすくなったのだ。何度か書いてるけど、ともかく今の職場、交通の便が悪くて家まで直行で帰れない。車だと二十分の距離を、バスと地下鉄を乗り継いで1時間半かけて帰るのは、気力体力ともにかなり消耗するのである。
 定時に駐車場で待ち構えていたしげに、今週で終わる映画もあるので、何か見に行くかどうか聞くと、「明日は仕事だし、明後日は練習だから今日はウチで寝る」と言う。それでも買い物だけはしたいと言うので、ダイヤモンドシティに向かうことにした。
 「買い物って何を買うんだ?」
 「新しいストラップとねー、あとねー……」
 ところが、ダイヤモンドシティを目指している途中で、しげの携帯が鳴った。
 よしひと嬢のお父さんが亡くなられたという知らせだった。
 もう10年以上昔のことになるが、しげも私も、よしひと嬢のお父さんには随分お世話になったことがあるのだ。そのころのしげはかなり貧乏で、私にもよく「タカリ」に来ていたのだが、私だってそんなに裕福なわけではない。特に独身のオタクは食費削ってでもマンガなどに金を費やしているものであるから、しげにしょっちゅう奢ってやる余裕はなかった(つか、当時はそんな義理なかったはずなんだがなあ)。
 で、しげがよく食事を奢ってもらっていたのがよしひと嬢のお宅だったのである。当時、しげとよしひと嬢とは演劇活動を通して知り合った先輩、後輩の間柄ではあった。しかし、だからと言って、人間、際限なく他人に甘えていいものでもなく、そこには何か節度というものがあって然るべきだと思うのだが、しげにはそんなものはカケラもなかった。よしひと嬢のお宅に何の屈託もなく押し掛けて行って寝泊りし、上げ膳据え膳、衣服の世話まで含めてまさに「衣食住」をあちらのご家族から世話をしていただいていたのだから、厚かましいにもほどがあるのである。しげの寄生虫性格はこのころから堂々としたものだったのだが、それを文句一つ言わず、優しく受け入れていたのだから、よしひと嬢を含め、ご家族のご寛容、心の優しさ温かさ深さにはただひたすらに感嘆するほかはない。これはもう、義理人情を云々せずとも、何がなくともしげがお悔やみに行かないというのは、到底お天道さんの許すところではないのである。
 けれどしげはなんだかオロオロして、渋面を作っている。

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09月03日(金)
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