ID:10788
無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
[491680hit]
■夫婦の写真をお見せできないのが残念です。
インタビュー記事なんて煽情的に大袈裟に書かれるのが普通だし、ホントのところはブラッドベリがどの程度怒ってるのかは分らないけれども、もし本気だとしたら、ブラッドベリもケツの穴の小さいことである。
もちろんマイケル・ムーアがブラッドベリの『華氏451度』を知らなかったはずはないし、そのタイトルに“掛けて”、映画のタイトルとしたことは間違いないだろうが、こんなのは、盗作とかパクリとかいう類のものでは全くない。本歌取りほどにもならないただのモジリで、これを問題にしていたら、世の中の小説、映画、モロモロの芸術作品のタイトルの大半は「パクリ」ってことになってしまう。「華氏」という言葉は普通名詞でブラッドベリのオリジナルでも何でもないし、数字に至っては言わずもがなだ。だいたいそれを言い出したら、ブラッドベリ自身の『火星年代記』は先行する数多の『〜年代記』のパクリってことになってしまうではないか。
この手のモジリの宝庫はもちろんAV業界で、小説、映画、マンガ、アニメ、ありとあらゆる作品がただひたすら「エロ」のキーワードのもとに変換されてしまっている。そちら方面に私はあまり詳しくないので、とっさに思い出せるタイトルは、『ちびまる子ちゃん』が、『ちちまる子ちゃん』って、なってたのがあったなあ、くらいのものなのだが、確かに作家の立場からすれば、あまり気持ちのいいものではなかろう、とは思う。けれどだからといって、さくらももこがこれを知ったからと言って、「困ったな」くらいは感じるかもしれないが、憤慨するとはとても思えない。
インタビューでブラッドベリは、「『華氏911』の内容は自分の政治的な見解とはまったく相いれない」、と語ったそうで、タイトルそのものよりも、映画やマイケル・ムーア本人への不快感からの発言のようだ。案外、インタビューした記者のほうも“政治的に”マイケル・ムーアに対して反感を持っており、誘導してブラッドベリに言わせた、という可能性もあるように思う。できればそうあってほしいと願いたくなるのは、好きだった作家さんの「衰え」を認めたくはないからだ。しかしブラッドベリももう御年83歳で、ボケが進んでる可能性だって否定できない。だとしたらそちらの方がよっぽど悲しい。
私が理想とする一番のボケ方は水木しげる御大(もう半分は妖怪でいらっしゃるそうな)なのだが、誰でもが年を取ってああなれるとは限らない。自らの運命を受け容れる覚悟くらいはしておきたいのだが、私なんかきっとボケたら、今以上にトンチンカンなことばかりやらかしてしまうのだろうなあ。どこぞでノタレ死んでいたら、線香の1本でも手向けてやってください。
それにしてもアチラではタイトルに関するトラブルが多いことと言ったらない。いつぞやの日記にも書いたことだが、ティム・アレン、ジェミー・リー・カーティス、ダン・エイクロイド出演のコメディー、『スキッピング・クリスマス』が、そのタイトルがベン・アフレック主演の『Surviving Christmas』と似ているという理由で、『Christmas with the Kranks(クランク一家とクリスマス)』という味も素っ気もないものに変更させられてしまっている。『スキッピング』の場合、ジョン・グリシャムの原作が同タイトルで既にちゃんとあったというのにこの始末である。日本公開の際にはぜひ、原タイトルのままで公開していただきたいものなのだが。
[5]続きを読む
06月12日(土)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る