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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■ヤキモチを焼くという心理がよく分りません。
 14日の最終選考レースを回避した時点で、私は「ああ、これは落ちたな」と思っていたので、意外でもなんでもなかったのだが、本人や小出義雄監督、それからマスコミも世間の人々もかなり意外だったらしい。……なんでかねえ。
 高橋選手本人は「自分で決断したことで後悔はない」と言ってるが、これは「決断」じゃなくて、過去の実績を鵜呑みにした「甘え」だろう。でなければ「走れなくて残念」なんてセリフは出てこない。小出監督の「名古屋で走らせていれば」という発言も、「何を今更」である。
 それどころか、今日16日になって、日本陸上競技連盟事務局には、約150件の抗議の電話が殺到したとか。中には「爆弾を仕掛けるぞ」といった過激な内容も目立ち、選考過程の詳しい説明を求めて、1人で3時間以上も続けて抗議してきた例もあったとか。
 こういう既知外が今の高橋選手を支えているのなら、落選してホントによかったんじゃないかと思う。周囲の過剰な期待や、偏執狂的な情熱が、才能のある選手を狂わせ、潰してきたことはこれまでにもいくらでもあったことだ。マイペースを貫いているように見えた高橋選手ですら、「過去の実績」という幻想に踊らされてしまった。ここで少し冷静になって、自分の判断がただの傲慢だったことに気づいてもらったほうがいいし、もしも選ばれた選手たちが芳しい成績を残せなかったとしても、「私が出ていたら」なんて腐れた思いは持ってほしくない。でもどうせ世間の「ファン」と名乗るただのハイエナは、そんなふうに思うのだろう。自分の「応援」が人を「殺す」こともあるという可能性を考えもしないで。
 東京五輪の銅メダリスト、円谷幸吉選手の自殺を、もうみんな忘れてしまってるのだろうか。スポーツ界がクリーンだったことなど一度もない。


 声優の神山卓三氏が、昨15日、敗血症で死去。享年72。
 この人も、声を聞いただけで分る、声優さんの一人だった。『チキチキマシーン猛レース』のケンケンが代表作のように言われているが、声質はもともと飄々とした温かみのあるもので、今風に言えば「和み系」であった。温かみのある声だからこそ、そこにペーソスを感じさせることもできる。言わば日本の喜劇人の伝統を忠実にたどる演技を得意とされていたのだが、そういう演技のできるベテランの声優さんは、これであと富田耕生さんや緒方賢一さんなど、数えるほどしかいなくなってしまった。
 『機動警察パトレイバー』「視聴率90%」で、“顔の出ない”「クマ五郎」の悲哀を声だけで演じていたのが印象深かった。

03月16日(火)
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