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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■別れの謂れ/『おそろしくて言えない』1巻(桑田乃梨子)
父は、私が子供の頃、やたら酒を奨めていた。いろんな酒を買って来ては、「これならお前の口にも合おうや」と言って飲ませようとした。中には結構高価なワインやウイスキーなんかもあったように思う。長いこと封を切らずに取っていた「ナポレオン」が、父の書架には飾られていた。
でも私は、どんな酒を奨められても、一滴たりとも飲もうとしなかった。
父はいつか私と酒を汲みかわすようになりたいと思っていたのだろう。私も同じ気持ちだった。いつか父と酒が飲みたいと思っていたのだ。いや、今でもそう思っている。
だけど、飲まなかったのだ。
どうして父は、ごく普通に、たしなむ程度に酒が飲めなかったのだろう。
父は、自分が晩酌を始めた途端に、母が私を別の部屋に避難させていたのをどう思っていたのだろうか。
疑問形にすることはない。それはとうの昔に父にはわかっていたことだ。分かっていたから、どうしようもなかったのだ。
今更悔やんでも詮無いことを思いながら、私は母が亡くなった今でも、父と酒を飲むことを拒み続けている。父と酒を汲みかわす日は、多分、来ない。
しかし私も、酒こそ飲まなかったが、ふと気がつくと、父と同じような、やっぱりどうしようもない道に足を踏み入れていた。
西原さんは、鴨志田さんが酒をやめて戻ってくる日が来ると、信じているのだろうか。
もう再び元に戻ることはないのか、それともまた仲良く暮らせる日が来るのか。
未来は多分、西原さんには見えていると思う。
見えていてその上で、西原さんは鴨志田さんに「帰ってきて下さい」と願っているのだ。
なぜこういう人が幸せになれないのだろう。
仕事がちょっと長引いて、帰宅したのは9時直前、楽しみにしていた『SASUKE』はもう終わっていた。うーむ残念。スペシャル番組で飽きずに見られるのって、これのほかにはそうそうないんだけどなあ。
CSファミリー劇場で『押繪と旅する男』。乱歩の映像化作品としては悪い方ではないが、原作の短編にオリジナルを付け加えた分だけ長尺になって、間延びした印象。
これ、最初に見たのは福岡アジア映画祭のオープニング上映のときだったんだけど、何の故障があったのか、上映開始が1時間も遅れてしまったのだ。次に用事のあった私は、泣く泣く途中で映画館を出たのだったが、そのとき会場にはゲストで主演の故・浜村純さんもおいでだったのである。上映後はコメントなんかも語られたと思うのだが、せっかくのチャンスを逃してしまった。
もちろんあとでテレビ放送があった時に最後まで見たが、情に流れすぎているのが乱歩の世界と相容れないという感覚は拭い切れなかった。単体の映画として見た場合にはそう悪くもないんだが。そう昔の映画でもないのに、浜村さんも、多々良純さんも、天本英世さんも、既にこの世にないのが淋しい。
女房がバイトから早めに帰宅して来たので、遅い晩飯に空港通りの「めしや丼」に向かう。「ガスト」の「二画取り」はやっぱりもう飽きたようである。
ここの彩り弁当はミニハンバーグに焼きサバ、野菜の煮付けにミニサラダ、デザートにパイナップルの角切り少々と、おかずの種類は多いが、量はさほど多くなく、私のお気に入りである。
しげ、仕事明けで相当喉が乾いていたと見え、ドリンクバーもあるこの店に来たのだけれど、かなり疲れがからだに来ているらしく、なかなかメシが喉を通らない。そのくせ注文してるのがトンカツ定食とかコッテリしたヤツばかり、しかもご飯のオカワリまでするのである。真夜中にそんなもん食ってたら胃にもたれるに決まっているじゃないか。
案の定、「気持ち悪い」とか言って泣き出すが、分かっいてて目先の欲に負けているやつに同情なんかしてやらないのである。
マンガ、桑田乃梨子『おそろしくて言えない』1巻(白泉社文庫・630円)。
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10月01日(水)
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