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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■映画の栄華/『ロン先生の虫眼鏡』1巻(光瀬龍・加藤唯史)
大阪、博多、どちらも太閤秀吉が開いた商人の町という共通項があり、住んでる人の気質も似通ってる面が多い。かと言って仲がいいとも言い切れないところが微妙なところだ。松竹新喜劇や吉本新喜劇が好きで、小学校の頃、クラスにちょっと面白いことを言うヤツがいたら、先生や友達からすぐ「お前、吉本に入れ」と言われてしまう風俗まで大阪・博多と共通しているクセに(私も昔はよく言われた)、博多人は大阪弁を生で聞くのは耳障り、と感じているところがある。生の人間同士だと、やはりライバル意識が芽生えるせいなのか。
野球そのものより、スタンドのファン同士の熱狂合戦の方が面白くなるかもしれない。
チャンネルをいろいろ回してみると、福岡だけでなく、小倉でも大歓喜の様子が中継されている。まあ、みんなでお祭り騒ぎができること自体はいいこった。
例の「飛びこみ」も、多分あっちこっちであってるんだろうが、その様子を中継している局は一つもない。実際の飛びこみ映像を放送することで、マネをして飛びこむ馬鹿がこれ以上増えたりしないないように、という配慮だろう。
興味本意・野次馬根性の権化なテレビ局が、珍しくも良識的な判断をしたものだが、世間からの批判が強まったための腰砕け的な措置であることは分かりきってるので、あまり誉めてやる気にもならない。死者が出なきゃ、今日だって喜び勇んで撮影してたに決まっているのだ。
テレビ局も、その程度の常識的な判断ができるのなら、日頃からも少し報道の仕方を考えとけよ、と言いたい。
何にせよ、「飛びこみ者は報道の価値ナシ」、という判断がされたわけだ。「下の人などいない!」というのと同じことで、「飛びこみ者などいない!」ってことになったわけである。存在を消されるほどに世の中から迷惑がられてるってことなんだよ? 周囲の人間も気がついてるなら当人に言ってやんなよ。
マンガ、光瀬龍作・加藤唯史画『ロン先生の虫眼鏡』1巻(秋田文庫・690円)。
加藤唯史のマンガを最初に読んだのは『少年ジャンプ』の『サテライトの虹』だったので、当時の私の中では加藤さんは「かわいい女の子を上手く描ける人」という印象だった。でも時代はまだラブコメブームが来るにはほど遠く、「バックステージものは当たらない」というジンクスも手伝ってか、『サテライト』は単行本でわずか2巻で終わってしまった。しかもジャンプコミックスでは出してもらえず、落穂拾い的な作品が多かったジャンプ・スーパー・コミックスの方でである。表面的な人気だけでしか作品価値を判断できないジャンプシステムの中では、加藤さんはこのまま消えて行ってもおかしくはなかったかもしれない。
ところが加藤さんは、いきなり活躍の場を『少年チャンピオン』に移して、「昆虫・動物マンガ」を描き始めた。画力のある人だから、そういう分野もソツなくこなしていたが、その転身ぶりがあまりに極端だったものものだから、当時はかなり驚いたものである。しかも原作者が、あの光瀬龍と来たもんだ(ロン先生が光瀬龍自身だということに気付くのにはちょっと時間がかかったが)。驚きは二重三重である。
マンガとして見た場合、ウンチク的要素の強い本作は地味で、全盛を誇っていた頃の『チャンピオン』の中ではかなり損をして見られていたと思う。連載も巻末ページに近いことが多かったし、カラーになったことも殆どなかったのではないか。本書のあとがきでも、「チャンピオンの良心」と呼ばれながらも人気がなかったことを加藤さんが述懐されている。
けれど、文庫による再刊ラッシュの中にあって、本作の復活は嬉しいものの一つだろう。
09月30日(火)
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