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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■女の子がいっぱい/『恋愛自由市場主義宣言! 確実に「ラブ」と「セックス」を手に入れる鉄則」(岡田斗司夫)
ここまでシリーズが続けば、岡田さんは確実に「本気」で「オンリーユー・フォーエバー症候群」を妥当しようとして書いているんだろうけれど、現実的な「効果」はどの程度上がるものだろうか。
今回、岡田さんは前掲三書になかったキーワードを大きく前面に押し出してきた。「セックスフレンド」である。「結婚」と「恋愛」を厳密に弁別すれば、セフレを許容するようになるのは論理的帰結ではあるが、そこで岡田さんの理論に納得して、一歩前に踏み出せる女性がどれだけ出てくるものだろうか。
基本的に私は岡田さんの主張に賛同を示したい。恋愛論にかこつけてはいるが、岡田さんが説いているのは女性の一人格としての自立だ。結婚せずに性行為の相手としてだけ男性を求めたところで、何が悪いことがあろう。
ただ、岡田さんは女性を「乗せる」ために言質を弄して「恋愛自由市場主義」をいいことづくめのように書いているが(よく読めば結構シビアな責任が伴ってくることに気づかなきゃならないのだが)、案外、既成の「道徳」ってやつはしぶとい。
「恋愛は自由じゃん」と言って何人もの恋人を持っている女性でも、他人が自分と同じことをしていれば、「浮気者、不倫」となじったりするのである。自分の場合は「純愛」で、他人の場合は「ふしだら」だなんて、身勝手も甚だしいが、もちろん、そんなのは全く論理的ではない。岡田さんもそんな勝手を認めろと言っているわけではないのだ。
ここは「恋愛自由市場」なのだから、誰が誰をどう好きになっても構わない。自分もそうだし、他人もそうだ。「私だけが」というのは「恋愛独占主義」なのである。
ただ、現実の市場と同じく、モノには手に入れやすいものと手に入れにくいものがある。好きな相手に既に伴侶がいれば、当然、「難易度」は高くなるだろう。その難しさの正体を岡田さんは「道徳ではない」と言うが、やはり「道徳」ではないかと思うのだ。
「あなたの相方、私、気に入っちゃったから、週に三日だけ頂くわ」と宣言して、相手の夫婦が二人揃って「はい構いませんよ」と納得する例って、そうはあるまい。夫も妻も拒否をした場合、女の方は嫉妬心が大きいとしても、男の場合は明らかに道徳心が主であろう。特に、その相手の女性に惹かれていながら拒否をしたとすれば。
岡田さんが行おうとしているのは、既成概念に縛られている女性の「意識改革」である。だからこそ「敵」としているのはその「道徳心」なわけで、これを打倒するのはちょっとやそっとのことで叶うものではない。しかしその困難さをストレートに語ってしまったら、大半の女性は怖気づき、「一歩」を踏み出せなくなってしまうだろう。だからこそ岡田さんはそのあたりを韜晦しなければならなくなるのだが、そのせいで結果的に、本書は随分「ゆるい」作りになってしまった。
女性読者からの「彼が浮気症で困っています」との質問に、「彼とはセフレとして付き合いましょう」と岡田さんは答えるのだが、そんな簡単に意識改革ができるのなら苦労はいらない。しつこく男に絡めば絡むほど捨てられるとわかっていてもどうにも自分の心が止められなくて絡んでしまうのである。「な−んだ、そっか−」と納得できるのなら、とうの昔にカラダだけの関係で満足しているだろう。
岡田さんは森永卓郎さんとの対談では、「セックスしたいって結論を言う前に、相手にはプレゼンしなきゃ」と「手順」を説明しているのに、読者の女性とのQ&Aではその手順を全く無視して単刀直入にモノを言い過ぎている。これは「戦略」としてはかなりマズいのではないか。
私も似たようなことを若い子から相談されることがあるが、基本的に岡田さんのスタンスには賛成でも、他人の恋愛沙汰にアドバイスしてやるほどの親切心は私にはないから、テキトーなこと言って「気分だけよくしてやって」ほたらかしますがね。恋愛にスタンダードはないんだから、関わるだけ損です。
07月31日(木)
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