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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■健康じゃないけどとりあえずは……/『名探偵コナン 特別編』19巻(青山剛昌・山岸栄一)
 http://www.mindspring.com/~mkoldys/episodes.htm
 ここに紹介されているテレビ作品のうち、日本で紹介されたのはピーター・ローフォード主演の“Ellery Queen: Don't Look Behind You”が『青とピンクの紐』というどうしょうもないタイトルでテレビ放映。原作は『九尾の猫』である。ジム・ハットン主演のテレビシリーズも放映されたはずだが、私はいずれも未見。見ても多分つまんなかったんじゃないかな。刑事コロンボのオリジナルスタッフであるウィリアム・リンクとリチャード・レヴィンソンが制作してたのだが、さて、倒叙ものでないミステリだとあの人たち今一つだからねえ。それにどうやら現代に時代を移してるらしいのもマイナス要因なんである。

 映画に戻って、『十日間の不思議』がフランスで“La Decade prodigieuse(「異常な10年間」英題/Ten Days' Wonder)”として1972年に映画化。なんと監督はクロード・シャブロルである。オーソン・ウェルズやアンソニー・パーキンスも出演していて、見てみたいのだが、これがまた日本未公開。フランス映画なので、エラリィもフランス人に置き換えられ、「ポール・レジス」という名前になっている。演じるのはミッシェル・ピッコリ。
 そして今のところクイーン最後の映像化は、1979年、「エラリー・クイーンが映画になる」のキャッチコピーで本邦で映画化された野村芳太郎監督作品『配達されない三通の手紙』(原作は『災厄の町』)。考えてみたら、クイーンの映像化作品を私はこれしか見ていない。
 当時は松坂慶子のセミヌードがやたら宣伝に使われていて(後に『青春の門』や『火宅の人』で完全ヌードを披露するようになるが、このころはまだ出し惜しみしていた)、パンフの裏表紙も全面、胸を隠した松坂さんのヌードであった。こういうことは細かく覚えているのである(^_^;)。
 エラリー・クイーンに当たる探偵役はボブ(名字がわかんねえんだよ)というハーフの留学生の青年という設定で、演じていたのは蟇目良。その二年前、朝の連続テレビ小説『風見鶏』で、新井春美の相手役をさわやかに務めていてある程度顔が売れてはいたが、外国作品が原作だから外人を探偵にしたのかと、当時はその安易さに鼻白んだ人も多かったと思う。今だったら黒田アーサーにやらせるのか。ヒロインが安達祐実だったらお笑いになるぞ。
 映画は原作よりも随分アッサリした作りになっていて、犯人もトリックも簡単に割れる。脚本の新藤兼人が本格ミステリの書き手としてはあまり妥当ではなかったせいだと思う。『事件』の時はよかったんだけどなあ。
 それでも佐分利信・乙羽信子・小川真由美・栗原小巻・神崎愛・片岡孝夫(片岡仁左衛門)・渡瀬恒彦・竹下景子・米倉斉加年 といった演技派の好演に助けられて、地味な印象の強い野村作品の中では珍しく豪華な印象を与えていた。DVDが出れば絶対買うんだがなあ。

 つい長々と書いてしまったが、若い読者にとっては細かいウンチクはともかく、今回の新訳は「読みやすくとっつきやすい」だろう。ハヤカワ文庫版でクイーンのほぼ全作品が新訳で読めるようになったことは素直に喜びたい。
 もっとも、本来のエラリィ・クイーンであるマンフレッド・リー(本名マンフォード・レボフスキー)とフレデリック・ダネイ(本名ダニエル・ネイサン)の従兄弟が二人で合作していたのは1958年の『最後の一撃』までで、ブレインであるリ―が引退してからは、執筆者としてしか関与していなかったダネイは「EQ」ブランドのプロデューサーとなり、それ以降の作品はすべて代作とならざるをえなかった。1963年の『盤面の敵』などはシオドア・スタージョンの作なのである。
 それはそれとして、クイーンの作品は私も未読のものが多いから、これから読んで行くに吝かではないのだが、まだ一度もクイーンを読んだことがない、という方には、とりあえず『Xの悲劇』と『Yの悲劇』をお奨めする。もっとも探偵エラリィは出てこないんだけど。


 マンガ、青山剛昌原案・山岸栄一漫画『名探偵コナン 特別編』19巻(小学館/てんとう虫コミックス・410円)。

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06月14日(土)
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