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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■今日はケンカしなかったね/映画『スコルピオンの恋まじない』/DVD『新八犬伝 辻村ジュサブローの世界』
 ついた時にはちょうど1回目の上映が終わる少し前であったが、2、30人のお客さんがゾロゾロと出て来ていた。オジサンも中にはいるが、オトナのカップルや、大学生風の女性たち、概ね女性率が高い。でも、ダン・エイクロイド“一人”が目当てで来ている客はしげくらいのものであろう(^_^;)。

 映画『スコルピオンの恋まじない』。
 原タイトルは“The Curse of The Jade Scorpion”。
 “Curse”は普通、「呪い」って訳すんだけれども、「ジェイド・スコルピオンの呪い」じゃ、どうしたってホラー映画にしか見えないから、この邦題は正解。
 キャッチコピーの「しあわせの処方箋、教えます」ってのはハズシてるけど。
 
 1940年のニューヨーク。C.W.ブリッグス(ウディ・アレン)は、一流保険会社ノースコースト社に勤務している自称・腕利き保険調査員。まあ、決して二流ではない、という程度には事実で、社長のマグルーダー(ダン・エイクロイド)の信任も厚い。ピカソの盗まれた名画を見付け出したりと、最近は特に絶好調である。
 ところが、最近入社してきた同僚のベティ=アン・フィッツジェラルド(ヘレン・ハント)は直観に頼るブリッグスとは考え方が正反対の合理主義者。おかげで彼とは顔を見るたびに皮肉を言い合う犬猿の仲だった。
 ところがある日、二人は同僚のジョージ(ウォーレス・ショーン)の誕生パーティで、インチキ魔術師ヴォルタン(デヴィッド・オグデン・スティアーズ。米版『千と千尋』の釜爺!)のマコトシヤカな「ジェイド・スコルピオン(サソリのペンダントである)の呪い」によって催眠術をかけられて、「コンスタンチノープル」「マダガスカル」という呪文を耳にするたびに、恋に落ちてしまう関係になってしまった。
 ところがそれはヴォルタンの巧妙な罠。その日をから謎の宝石泥棒が世間を騒がせ始め、ブリッグスは犯人を捕まえようと奔走するのだが……。

 もちろん、実行犯はブリッグス。
 何しろホントに泥棒やってるんだから、指紋だの何だの次から次へと犯人の証拠が出てくるんだが、それをなんとか言い訳しようとどんどんデタラメなことを喋り出すアレンの芸が面白い。この言い訳芸、『何かいいことないか子猫チャン』や『OO7/カジノ・ロワイヤル』のころからのアレンの持ち芸なのだけれど、年を取ってもこの話芸だけは衰えない。ジョン・ベルーシ、チェヴィ・チェイス、ダン・エイクロイドたちも、これまでにこぞってこの「言い訳芸」を披露してくれているが、やはりウディ・アレンのそれが一頭地を抜いている。
 体技タイプのコメディアンが旬を過ぎると映画が作れなくなって行くのに比して、そろそろ70歳になろうというアレンが新作を連発できるのは、彼が基本的にスタンダップ・コメディアンだからだろう。
 「話芸」と言っても、もちろん面白い「間」を作るためには動きのキレは必要なわけで、催眠状態から正気に戻る切り替えの間などは絶妙で、この分だとまだまだ面白い新作を取ってくれそうな気配である。

 現実には、こんなに簡単に催眠術にはかからないものだろうが、それは映画のウソとして許容できる範囲。催眠術にかかっても、本人がイヤなことは絶対にしない、という事実は世間一般の常識になっていると思うが、ブリッグスにはどうやら泥棒願望もあるらしいので、その点はクリアーしている。
 パンフレットには心理学者の門前進氏が解説をつけており、それによると催眠状態に入っても、完全に記憶が欠落するわけではなく、「今、自分は催眠状態にあるんだ」という心は残っているそうである。どっちかと言えば、ブリッグスもベティも完全に自分の催眠中の行為を忘れちゃっているのが事実と反するのだが、そこに突っ込むと映画自体が成り立たないから、これもしょうがなかろう。
 じゃあ、催眠術で犯罪を犯させることは不可能かというとそんなことはなく、やはり門前さんの指摘によれば、現実に催眠誘導(「催眠をかける」という言い方はしないそうだ)を利用した事件はかなりあるんだとか。つまり、実際には「催眠誘導されてるとわかってるけどやっちゃった、やった以上は逃げるしかない」っ感じになるものなのかな。


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02月15日(土)
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