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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■敬三の乗る船/映画『シミキンの無敵競輪王』/『ワンピース』27巻(尾田栄一郎)
 脚力のあるところを示すギャグが随所に出てくるのだが、輪タク(自転車で引く人力車。これも戦後の風物である)を引いたまま電車に追いついたりとか、工場の足漕ぎ式の蓄電器が爆発したりとか、そしてクライマックスの競輪シーンもそうなんだが、全て特撮などによるゴマカシだからまるで説得力がない。どちらかというとワキの役者の方に目が行く。
 柳家金語楼は東宝映画の伝統のような調子のいい社長役を好演しているし、渡辺篤もこのころは後の黒澤映画出演時の飄々とした味わいとは違って、インケンで尖がってる役を軽快な動きで演じている。三木のり平はこのころからタイコモチっぽい(^o^)。『午後の遺言状』のボケた演技もすばらしい朝霧鏡子の娘時代のかわいらしい姿も見られた。
 あと、タイトルバックが杉浦幸雄のマンガ。これが金語楼などはよく似ているのだが、肝心のシミキンが似ていない。辛辣な諷刺画で知られた杉浦さんにしてはちょっと手抜きの似顔絵であった。


 映画に行こうと思っていたのだが、体調が優れず中止。
 いつもは私にくっつきたがって離れたがらないしげが、朝から私を何となく邪険にして「今日は出掛けんとね」なんて憎まれ口を叩く。
 「出かけなきゃいかんのかね」と言い返したら「邪魔やん」とミもフタもない返答をされる。
 どうしてだろうと思っていたら、鴉丸嬢が来るとのこと。
 「……何しに?」
 「チョコ作りに」
 そのコトバを聞いた途端、戦慄が私の背中を走った。
 いや、そんな大袈裟な話ではないのだが。

 話は、一週間ほど前に遡る(おお、何だか司馬遼みたいな展開! ……どこがや)。
 外から帰ってきたしげが何やら銀色に光る怪しいものを「抱えて」いる。
 よく見るとそれは金ダライ。ちょうどドリフのコントでいかりや長介の頭に落ちてくるような、やや平べったい感じのアレである。
 「何だよ、それ」
 「見てわからん? タライ」
 「タライは分るよ! 何に使うのかって聞いてんだよ」
 普通、こんな質問は愚問である。タライと言えば、赤ん坊やペットを洗ってやるとか、洗濯に使うとか、用途は限られている。
 けれど、うちには赤ん坊も動物もいないし、ましてや、あの電気洗濯機すら使いこなせない無精者のしげが、タライで洗濯しようなどと考えるはずもない。
 だからこそ、しげ with TARAIという姿が異様に見えたのだが、一拍置いて答えたしげの言葉を聞いて、私は耳を疑った。
 「バレンタインチョコの型だよ」
 「……はああ!?」
 ちなみに、そのタライの直径は48センチ。深さも5、6センチはあろうか。これを型にチョコを作るって……いったいどれだけの量のチョコが必要になるのだろうか。
 いや、量の問題ではない。
 「……おまえ、本気でそれでチョコ作るん?」
 「いかんと?」
 「いかんって……モノには限度ってものがあるやろ。やめとけよ」
 もちろん、一度暴走し始めたしげが、私の言うことなど聞くはずもないことはわかっちゃいたのだが……。

 てなことがあったのが1月31日のこと。
 私もタライのことはすっかり忘れていたのだが、やっぱり本気でタライチョコを作る気なのだ。
 私も私生活の中でバカな冗談を言うのは好きである。バカなプレゼントをして、相手がちょっと困ったような顔を見るのも楽しかったりする(←悪趣味)。
 しかし、しげのは「冗談」でそんなモノを作るのではない。
 しげはマジなのだ。
 そもそも一昨年、直径30センチくらいのバスケットボール大の球形チョコを作った頃からしげは壊れていったのだが(もともと壊れているという説もあるが)、よしゃあいいのにそれを「挑戦」と受け取った其ノ他くんが、見事に食べ切ってしまったおかげで、しげは自分の行為が「正しい」と思いこんでしまったのだ。

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02月08日(土)
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