ID:10788
無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
[491701hit]

■肉は飲みこめ!/『トレイル・オブ・ピンクパンサー』/『機動戦士ガンダム THE ORIGIN ランバ・ラル編 T・U』(安彦良和)ほか
 というのも、クルーゾーが「警部じゃない、主任警部だ」と言い張っているのは、『2』で精神病院に叩きこまれたドレフュスの後任として、『3』ではクルーゾーが「主任」になったことを何度も強調するギャグがあるからだ。それに、次作『ピンク・パンサー4』にもボールズ教授は登場するのだが、役者がグレアム・スタークに変わっている。本来なら、ボールズ教授の初お目見えは『3』の予定だったが、シークエンスがカットされた結果、『4』にまでずれこんだ形になった、ということのようだ。でも、これが『5』ではまたコーマンに戻るのだからややこしい。
 クルーゾーが捜査のためにルガーシュ王国行きを警視総監から命じられるシーンも同じく『3』での未使用カット。総監を演じたマーン・メイトランド、新たにドレフュス役のハーバート・ロムと絡むシーンも追加撮影しているが、ドレフュスと会話しているときはハゲなのに、そのあとのクルーゾーとの絡みでは髪がフサフサになっている。3歩歩いたら髪が生えるとはスゴイ増毛剤でも使ったのか。ツギハギ映画の苦しい事情がこのあたりで露呈してしまうのは仕方のないことなんだけどさ。
 ルガーシュに行くはずのクルーゾー、なぜかロンドンに向けて出立。犯人が怪盗ファントムと目星をつけての行動だが、ファントムことチャールズ・リットン卿(デビッド・ニーブン)は南仏にいるのである。これはもちろん『3』の舞台がロンドンであるための齟齬だが、それを「クルーゾーがトンチンカンなため」と言い訳するのは、さすがに苦しい。更にロンドンでクルーゾーはスコットランドヤードのドラモンド刑事(コリン・ブレイクリー。なぜか本作ではクレジットなし)に「初めて」会うのだが、これも『3』でクルーゾーは既に彼に会っているのだから再度初めて会うのもおかしな話である。
 ホテルのフロント係(ハロルド・ベレンズ)とクルーゾーがトンチンカンなやりとりをするシーンも『3』の未使用カット。クルーゾーが「マッサージは来てるか?」「……メッセージ?」「だからそう言っておろう!」フランス語訛りだとメッセージがマッサージになるのだろうか。
 しかしこうして見ると、ほとんどの未公開カットが『3』からのものだということが分る。未公開シーンを寄せ集め、というから、たいした量はなかろうとタカを括っていたのだが、どうしてどうして、前半40分ほどはクルーゾーは出ずっぱりだ。『3』は1時間43分の作品だから、これだけのカットシーンを復活させたら2時間20分もの大作になってしまう。そりゃカットされるわなあ。
 『3』はシリーズ中でも一番予算がかけられ、シリーズを通じても最も面白いものの一つなので、これだけ未使用カットも存在しているのだろう。

 後半は、失踪したクルーゾーの行方を求めて、女記者マリア・ジュヴェ(ジョアンナ・ラムレイ)が、かつてのクルーゾーの関係者を訪ね歩く展開。旧作からの名シーンも挿入されて、シリーズを通して見てきたファンにはなかなかのサービスになっている。
 ドレフュス署長(ハーバート・ロム)、ケイトー(バート・クォーク)、エルキュール・ルジョイ(『ドッキリ』以来のグレアム・スターク……と言いたいところだけれど、別の役を何役もやってるのである)、チャールズ・リットン卿(『ピンクの豹』以来のデビッド・ニーブン。『2』ではクリストファー・プラマーに変わったが再び復帰)、シモーヌ・リットン(キャプシーヌ。この美しき方が男とは……)、ブルーノ・ラングロワ(ロバート・ロジア。『4』に引き続いての出演だが役名が違う)、クルーゾー・シニア(リチャード・マリガン。『小さな巨人』のカスター将軍)。
 ラストは「クルーゾーは本当に海の藻屑と消えたのでしょうか?」とマリアが結んで、「『ピンクパンサー5』に続く」のクレジットが出てチョン。
 
 セラーズが死んでもなお、映画を作り続けることに意味があったかどうかは今さら言うまい。

[5]続きを読む

01月28日(火)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る