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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■海馬って記憶中枢のことだよ/DVD『ガリバーの宇宙旅行』/『わんわん忠臣蔵』/『あずまんが大王』三年生(完結)ほか
紫の星の住人たちが、ロボットを作り出した末に、自らもロボットの中に身を包むようになってしまった、というのは、いささかストレート過ぎる嫌いはあるにしても、鋭い文明批評である。何よりそれを過剰なセリフで説明することを避け、ロボットの王女がパックリと避け、そこから生身の少女(描写されてはいないが当然ヌードである)が現われるという衝撃の展開で見せる演出のスバラシサは、やはり「天才的」という言葉ででもなければ表現しきれない。
裸の王女(少女と言ってもいい)は、テッドに優しく上着をかけられる。
「寒いわ……」と呟く少女は、確かに冷たい風を感じていたのだろう。しかし、それは夜明けの風であり、彼女がこれから踏みしめて行くであろう、苦悩と希望の両方を象徴するものでもあるのだ。また、ヌードは当然「性」の謂であるが、これがまた「生」を表すものであることも容易に理解できよう。
この設定は、脚本にはなかった。
監督や作画監督の変更でもない。
当時、原画マンですらない、ペエペエの一動画スタッフが、「勝手に」そのシークエンスを作画し、それを通してしまったのである。
侃侃諤諤の言い合いはあったらしい。しかし、誰が見ても、王女をロボットのままにしておくより、その動画マンの主張する設定に変更したほうが圧倒的に面白かった。生意気を通りこして不遜とも言える動画マンのこのゴリオシを通した監督の黒田昌郎もエラいが、やはり称賛すべきは、その動画マンの一頭地を抜いた才能のヒラメキであろう。
彼の名を、「宮崎駿」と言う。
……まあ、当時からいささか説教臭かったとは言えるかな。同時にスケベでもあった(^_^;)。
けれどやっぱりこれはちょっと……と首を傾げたくなるのは、そのオチなんだね。
これを書くのはややしのびないんだが、この物語、実は全部テッドの「夢」なんである。……これだけドラマ盛り上げておいて、今さら夢オチかよ! と、当時も今も叫びたくなりますね。テッド本人は自分の勝手に見た夢で気持ちよくなったのかもしれないけれど、客は現実逃避の他人の夢に1時間半付き合わされただけじゃん(ーー;)。
脚本は東宝特撮映画シリーズの重鎮、関沢新一である。
……そう言えば、やっぱりたった一人で豪天号作った『海底軍艦』とか、苛められっ子が現実逃避して怪獣島の夢を見る『オール怪獣大進撃』とか書いてたな。宮崎駿がいなければ、ホントに腑抜けた駄作になっていたとこだ。
内容的にはあまり誉められたもんでもないんだけど、それでもこの映画は簡単に見逃していものではない。宮崎駿が最初にその才覚を表した記念碑的作品であると同時に、今や考えられないほどに豪華なのは、その声優陣なのである。以下を見ていただきたい。
テッド少年 ........... 坂本 九
紫の星の王女 ......... 本間千代子
ガリバー博士 ......... 宮口精二
ノラ犬マック ......... 堀 絢子
人形の大佐 ........... 小沢昭一
夢の使者キューピット . 岡田由紀子
紫の星の王様 ......... 大泉 滉
紫の星の科学者たち ... ダニー飯田とパラダイスキング
青い星のロボット ..... 今西正男
からすのクロー ....... 伊藤牧子
……ウソみたいである。
長いアニメの歴史の中でも、これだけの豪華キャストに匹敵するのは『もののけ姫』くらいのものであろう。
いやアナタ、坂本九がこの映画の中ではパラダイスキングに復帰してるんですよ! ってなんのことだかわかんない若い人も多いかなあ。「こっの世っでいっちばん、たっのしぃこぉとは、すってきなタイミングっ♪」って、知らない?
でも、残念ながら、坂本九の声は少年の声には全く合っていない。当時も今もそう感じていたが、しげもやっぱりそう感じたそうだし、多分同じ意見の人は多いだろう。
劇中、歌を歌ってもらうための起用だろうが、残念ながらたいした名曲はない。メロディーラインに「キモ」がないのである。音楽の富田勲、この映画ではあまり本領を発揮したとは言えない。坂本九のファンならばともかく、普通の音楽ファンにはちょっと音楽シーンは特にタルく感じちゃうんじゃないか。
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01月25日(土)
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