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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■言語作用としての2ちゃんジャーゴン/『POPEE THE PERFORMER ポピー ザ ぱフォーマー』(増田龍治・増田若子)ほか
例えば、今号でも大のオトナが、『ドラゴンボール』のキャラクターはどのような言葉遊びで成り立ってるのか、なんてことをマジメにマジメに分析している。このギャップが面白いんだね。でも、普段マンガを読みつけない人がそういうことやるもんだから、結構引用を間違ったりもしてる(^_^;)。『クレヨンしんちゃん』の「運黒斎」って、字が違っとりますがな(正しくは「雲黒斎」)。
それはそれとして、『「2ちゃんねる」におけるジャーゴン』と題して解説しているのは、メディア・プロデューサーの松本恭幸氏。
「ジャーゴン(jargon)」とは要するに「専門用語」「術語」のことで、ある一定の職種、グループ内のみで使用されるコトバのことである。こういったジャーゴンはどの世界にもあるものだが(同人界の「ヤオイ」とかね)、「2ちゃんねる」用語の多くが、「意図的に誤字誤読や語尾を変形したもの」である点が特徴的であると松本氏は指摘する。
例として挙げられているのが、「氏ね」「厨房」「がいしゅつ」「串(←プロクシーのことだったんだね。私ゃ今回初めて知ったよ)」「スマソ」「マターリ」「ドキュン」など。
「がいしゅつ」については、ホントに「既出」を「がいしゅつ」と読み間違えたアホがいて、そこから流行して行った過程がある。松本氏は「意図的に」と言うが、もともとは単純な漢字変換のミスから使用されるようになったものがほとんどなのではないか。パソコンによるコミュニケーションでなければ、こういうジャーゴンは生まれなかったに違いない。最近も、2ちゃんをチラッと覗いてみたら、やたら「香具師」って出てくるんで、「寅さん関係か?」と思ったら、これ、「奴(ヤツ)」を「ヤシ」と誤変換して、更に漢字をアテたんだね。なんでそこまでしてジャーゴンを作らにゃならんのか、理解に苦しむんだが。
松本氏はこれらのジャーゴンについて、「バーチャルなコミュニティ内でのコミュニケーションを維持するのに有効」と分析する。その点について、基本的に異論はない。
しかし、匿名性が前提となる2ちゃんねらーのジャーゴンが、「異質な他者の存在を許容する潤滑油の働きを担う」とまで言い切って肯定しちゃうのはどうかと思う。例えば、松本氏によれば、「出ていけ」とストレートに言うと喧嘩になるが、「逝ってよし」と表現すると、相手に不快感を与えずにすむ(どころか、言われた方はカタルシスすら覚える)そうである。
……そうなんですか? 2ちゃんねらーの人。
私ゃ、「逝ってよし」なんて言われたら、怒りゃしないけど嬉しくもありませんが。2ちゃんねらーになるためにはマゾにならないといけないってこと?
私は2ちゃんねるはROMはしても書きこみをしたことはただの一ぺんもないので、その「潤滑油」という感覚がわからない。どの世界でもそうだが、ジャーゴンが不用意に専門外の人間に対して語られる場合の多くは、相手に対する優越感が付随してくる。「こういう難しいコトバをオマエは知らないだろう、オレたちの仲間になりたいんなら、こういうコトバ遣いを覚えないとムリだぞ」という「村八分」の感覚でもあるのだ。
しかもそういう用語がさしたる意味もなく増殖に増殖を続けているということは(これは例えば医学の発展により医学用語が増えて行くのとはワケが違う)、円滑なコミュニケーションを図るためと言うより、「囲いこみ」の論理のほうがより優先されていることの証明だろう。2ちゃんねらーであり続けるためには、日々それらのジャーゴンを覚え続けなければならないのだ。
そして、2ちゃんねる初心者で、ジャーゴンにまだまだ慣れていない人間に対しては、「厨房」「逝ってよし」の、相手にとっては何のことか判らぬ罵声を浴びせる。これは例えて言えば、英語の判らぬ日本人に対して、「Jap」と罵倒するのと同じ感覚だ。キョトンとしてる日本人を見て、更に嘲うのね。相手だって、よっぽど鈍感でない限り、どうやら自分がバカにされてるらしい、くらいのことには気がつく。さて、これで「円滑なコミュニケーションを図ろうとしてる」なんてことが言えるものかどうか。もしそう思って2ちゃんねらーたちがこれらのコトバを使ってるんだとしたら、それはとんでもない甘えである。
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01月17日(金)
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