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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■食えないモノを食う話/『名探偵コナン 揺れる警視庁1200万人の人質』/『ジャイアントロボ誕生編』(伊達憲星・冨士原昌幸)ほか
 佐藤刑事&高木刑事のラブラブ編&連続爆破犯を10年に渡って追い続ける話。
 原作付きだけれど、冒頭に「萩原」って刑事が殉職する話を追加。萩原が死んで松田が死んでって……まあ、元ネタは明らかだけれど、カッコつけてるだけで内面のないキャラがいくら死んだって、訴えるものはなにもない。回数が増えた分、くどい印象しか与えない。萩原も松田も、爆弾解体作業中に何をムダ話してやがるかコイツって感じだしなあ。
 犯人の「仕掛け」は、爆弾の爆破3秒前に、次の爆破予定地が表示される、というもの。
 爆弾の仕掛けられた観覧車に閉じ込められた松田刑事、それを読むまでは爆弾を解体できず、読んで佐藤刑事の携帯に場所を送信している間に3秒は過ぎ、爆死……ってんだけど、まあ、10年も前に携帯が普及してたのかってツッコミは置いといても、爆弾止めてから場所を送信すればいいじゃん? と考えたのは私一人じゃないはず。松田刑事、サルか……と思ってたら、あとでコナンが全くその通りのことをして爆破を回避しちゃうんだものなあ。これじゃ松田刑事、無駄死にどころかただの「バカ死に」である。
 今回の事件では、コナンと高木刑事がタワーのエレベーターに閉じ込められるのだけれど、犯人、以前は素直に次回の爆破予告地を教えてたのに、なぜかそれを暗号化。犯人がよりイジワルになっているってことなのかもしれないが、だったらいっそのことウソの予告をすりゃイイんじゃないかね。この犯人、妙なところで正直である。
 このときの暗号、原作読んだときにも思ったが、ただのコジツケで暗号なんて言えた代物ではない。“detective(探偵)”をひっくり返して“evit……”で「帝丹高校」を示すってねえ……。いや、話の流れから帝丹高校が狙われてるってのはバレバレだから、その分、暗号のコジツケ具合が目立って興を削がれることおびただしい。

 でも、そういう細かいところはまだまだマシなところで、一番情けないのが、犯人の動機に関する描写の中途半端さなんだよなあ。
 もともと犯人はただの金目的、動機に同情の余地は一切なかったんだけれど、途中、仲間が警察のダマし打ちで死んだと錯覚して、警察への復讐がメインになってくる。こうなると盗人にも三分の理じゃないが、視聴者の犯人への同情だって少しは生まれてくる。少なくとも、犯人の誤解は解かないとって展開は当然期待されるのだが、これが全くない。
 いったいなんのためのネタ振り? と思ってたら、ラスト近くで、松田刑事の復讐の念に駆られた佐藤刑事が思わず犯人を射殺しようとしたのを、高木刑事が止めたときのセリフにそのワケがあったのだね。
 「何やってるんですか、佐藤さん。いつも、佐藤さんが言ってるでしょ。誇りと使命感を持って、国家と国民に奉仕し、恐れや憎しみに囚われずにいかなる場合も人権を尊重して公正に警察職務を執行しろって、そう言ってたじゃないですか。そんなんじゃ、松田刑事に怒られちゃいますよ」
 つまり「犯人の人権」を尊重しろ、と言いたいわけだ。けれど、リクツではそうでも、描かれる犯人に同情の余地が全くなければ、「なんでこんなやつの人権まで保障してやらなきゃならんのだ」と、いう感情はどうしたって動く。マンガはリクツじゃないんだからさ。そのために「盗人に三分の理」を与えたってワケだ。姑息だねえ。
 「こんなやつのために松田君が!」って佐藤刑事の怒りも、犯人の「警察めハメやがったな」も、どちらも両立させようとするからこんな中途半端な描写になる。ミステリという現実の世界に根差したドラマを作ろうってんなら、たとえ子供向けアニメでも、いや、子供向けアニメだからこそ、こういう「正義とは何か?」「罪とは何か?」って命題を適当に扱っちゃマズイでしょ。
 「なんで佐藤刑事、犯人を撃たなかったの?」
 「どんなに悪い人でも、勝手に殺しちゃいけないんだよ。ちゃんと裁判にかけないと」
 「かけたら死刑になるの?」
 「なるときもあるし、ならないときもあるね」
 「ならなかったら、あの犯人、また同じような事件起こさない?」
 「どうかなあ、反省してもうしないんじゃないかなあ」
 「……ふーん」

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01月06日(月)
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