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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■日記書いたことしか記憶にないな/『ヘウレーカ』(岩明均)ほか
皮肉なことに、それだけの殺人兵器を作りあげたアルキメデスは、このときすっかり年老いて、ボケていた。
しかし、そのボケたアタマにもかかわらず、アルキメデスは、まるで自らの運命を暗示するような言葉をポツリと呟くのだ。
「わしの設置した防備もいつか打ち破られ、敵がなだれこんでこよう……。そして恨みをこめた刃でわしを切り刻む……当然のことじゃ」
科学技術は、使うものの意志による、とはよく言われるが、このアルキメデスは明確に「自らの理論が人を死に追いやっている」ことを自覚している。まさに「アルキメデスは手を汚している」のである。
エンタテインメントとして純粋に楽しい物語だし、あまり深読みはしたくないのだが、なんだか岩明さんはこのアルキメデスを全ての科学者への警鐘的な存在として描いているような気がする。
事実、アルキメデスは激昂したローマ兵に殺されてしまうのだから。
ダミッポスは、ローマ人であるために捕らえられていた恋人のクラウディアの命を救うために、アルキメデスの知恵を借り、太陽熱を利用して、シラクサに攻め寄るローマ船を撃退する。それもまた史実ではアルキメデス自身が作りあげた兵器なのだが、岩明さんは、それを「ダミッポスの発明」とすることで、天才ならずとも科学者はみな、ときの政治に利用され、罪深い行為を繰り返していく危険を孕んでいることを示唆している。
ダミッポスはクラウディアを失い、苦笑しつつローマのマルケルス将軍に向かって嘯く。
「あんたらはすげぇよ。でももっと……ほかにやる事ァないのか?」
しかし、ほかに何もやることがなかったのが人類の歴史であったのだ。
01月03日(金)
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