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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■藤岡弘が洞窟に入る♪/『地球ナンバーV‐7』(横山光輝)/『キッチュワールド案内』(唐沢俊一)/DVD『プリンセスチュチュ』1巻
 もちろんこれは横山作品に対する悪口ではない。思想と無縁だからこそ横山作品は長く読者の心を捉えてきたのだ。誤解を招くことを承知の上で横山作品の魅力を解説するなら、「どんな思想も作劇上のハッタリ」となるその「無節操さ」にあると言えよう。
 『V―7』の冒頭は、意外にも『機動戦士ガンダム』によく似ている。
 人類が、その増えすぎた人口の解消に、火星に移民しはじめて既に長い時が経ったころ。降り注ぐ宇宙線の影響か、人間自体が進化しはじめたのか、火星では超能力を持った人々が多数生まれ始めていた。火星政府は自らの優越性を根拠に、火星の資源を搾取し続ける地球政府に対し、「超能力者によるテロ」という形で脅迫を行い始めた。
 地球政府は、火星政府の野望を打ち砕くために、地球人類の中から超能力者を捜索し、殲滅に当たらせる。そこで選ばれたのが、V−7ことディック・牧。ところが、火星の秘密工作員を次々に倒していくディックに、地球政府はかえって恐怖を覚え始める……。
 後半になるに従って、当初の設定が微妙に変わってきて、最後は火星政府の存在自体が全く忘れ去られるなど、多少のいい加減さはあるものの、『伊賀の影丸』や『仮面の忍者赤影』などの忍法もので培ってきた、特殊能力を駆使しての対決シーンはやはり迫力があり、全体的なまとまりもいい。
 ディックの僚友・ブレランドのひょうきんな味わいや、秘密警察長官があの村雨健次だったり、横山ファンならニヤリとする趣向も盛り沢山だ。
 第2弾、第3弾も出版予定らしいが、このシリーズで『ジャイアント・ロボ』の完全版も出してくれないかなあ。
 
 
 唐沢俊一『キッチュワールド案内(ガイド)』(早川書房・1365円)。
 表紙絵のD[di:]さん描く唐沢さん、まるでぽっぺん先生みたいだ。童話と勘違いして買ってく人とかいないだろうか。いないな。
 早川書房の本だから、いずれ文庫にはなるのだろうが、唐沢さんの著書はやはり単行本で買う癖がついてしまっている。でも文庫になったら多分それも買ってしまうのだ。どうもご本人を存じ上げるようになって、WEB日記で本の売れ行きを気にされている様子まで知ってしまうと、こりゃ少しでも売り上げに協力をしないと、という気になってしまうものである。
 さてしかし、『キッチュワールド』というタイトル、売れ筋をねらうにはいささか弱くはないか。「キッチュ」という言葉自体、一時期ほどには世間に浸透しなくなっている。かと言って、「トンデモ物件」と言っちゃうと中身とズレが生じる。連載中の『妄想通』ではマズい理由でもあったのだろうか。私はレイアウト次第ではこのタイトルの方がよっぽどキャッチーだと思うのだが、客層が狭くなっちゃうのかなあ。
 けだし、本のタイトル付けは難しい。

 唐沢さんの数々の著書の中でも、この種の「ヘンなもの」解説本はまさしく本領発揮と言えよう。唐沢さんが60歳くらいになられたら、本気で南方熊楠の『十二支考』並の著書が書けるのではないか、と思っている。一つのテーマに関わる題材を収集していくと、全く無関係に見えたあるモノとあるモノとの意外なつながりが見えてくることがある。それはまさしく「世界の再構築」であり、それまでは何の変化もなく、退屈な日常が繰り返されるだけのように見えていたこの世の中が、実は一変しておかしくてデタラメでトンデモナイ姿を見せ始めるのだ。

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12月26日(木)
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