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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■ウチもベストカップルだと言われることはあるが(-_-;)/『アフター0 著者再編集版』7・8巻(岡崎二郎)
悲しいのか怒ってるのか、「言はで思ふぞ言ふにまされる」ということであるのか。
しげの沈黙ほど怖いものはない。
マンガ、岡崎二郎『アフター0 著者再編集版』7・8巻(完結/小学館/ビッグコミックス オーサーズ・セレクション・各530円)。
『世にも奇妙な物語』スタッフは、岡崎二郎作品を原作にしてまるまる2時間、スペシャルドラマ化を図ったらどうか。それくらい、岡崎作品はバラエティに富んでいる。その質の高さはマンガによる『トワイライト・ゾーン』と称しても過言ではなかろう。
7巻は『生命の鼓動』というタイトルで動物モノを収録。最終8巻は『未来へ…』と題して科学の発達・進化の行く先を空想したSF作品を集める。特に8巻は、シリーズ第一作『小さく美しい神』と最終作『無限への光景』を同時収録するという、岡崎作品の原点と、未来への展望を同時に味わえるという粋な構成になっている。「オーサーズ・セレクション」の名に恥じないってとこだね。
『小さく美しい神』は、業界で五指に入るほどの大企業、大洋電機の成長には座敷童子がいた、というお話。カイシャなんていう、民話のキャラが住まうのには不似合いなところに、どうして童子が居付いたのか、というのがこの短編のキモなわけだが、その真相の提示のしかたがいかにもフレドリック・ブラウンのような藤子・F・不二雄のような小粋なモノだったので、「おもしろい作家さんが出てきたな」と注目したのだ。ちょうど『こちらITT』で草上仁さんが出て来たときの鮮烈な印象に近い感じだ。
『アフター0』というタイトルは、当然「アフター5」をもじったものだろうから、そこに「深夜を過ぎてのフシギな時間」というイメージとともに、「会社もの」というシバリをかけてどこまでSF・ファンタジーがやれるか、という作者の挑戦の意味もあったと思う。日常SFこそがSFの王道、と考える私には、岡崎さんのこの方針がいたく気に入った。
最終作『無限への光景』で、この「0」が「輪廻の輪」をも暗示していることに気付いたとき、「してやられた!」とも思った。こういうダブルミーニング、トリプルミーニングにセンス・オブ・ワンダーを感じられるかどうかで、その人がSF者か否か、資質の境が問われることになると思う。
ある意味、岡崎さんの作品は落ち自体は予測がつけやすい。意外性に欠ける、という点では「そこにセンス・オブ・ワンダーはあるのか?」という疑問も湧きはする。けれど、それでもその予測可能なオチを「期待」しつつページをめくる心理、一度読んだ話を何度も反芻したくなる心理、そのような心理がどうして起きるのかを考えてみると、やはりそこには、SF者が最近ついぞかつえている「初めてのドキドキ」を思い起こさせてくれる「何か」があるからではないか、と思わざるを得ない。
「懐かしさ」という言葉だけでは表し切れない、まさしく我々が世界との接点をどう見出して行けばよいのか、絶望と希望と、現実と夢の交錯するはざまに立っていた「あのころ」の感覚。岡崎作品から感じるものはそういうものだと思う。
11月08日(金)
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