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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■妻にはナイショ(^_^;)/映画『OUT』/『プリティフェイス』1巻(叶恭弘)ほか
確かにユーモラスなシーンがないわけではない。けれど、それにしてはこの映画のツクリ方はひたすら「地味」だ。それは原田美枝子、西田尚美、室井滋、倍賞美津子というキャスティングにも表れている。演技派の方を集めたってことなんだろうけど、はっきり言って華がない。『模倣犯』の中居正広、木村佳乃がよかったとは全く思わないが、『OUT』のキャスティングに比べれば遥かに華がある。原田美枝子の「旬」は『鳴門秘帖』で終わっているので(おいおい)、主役に持って来るのはちょっとなあ、とどうしても思ってしまうのだ。役柄的にも倍賞美都子とキャラが被ってしまっているのは痛い。この二人、息があってはいるのだが、演技の質がそっくりなので、インパクトが相殺されてしまっているのだ。かと言って大竹しのぶを持ってくると『黒い家』の再現になっちゃうし、もっと地味になっちゃうしなあ(^_^;)。
ここに、日本映画の役者の層の薄さが露呈してしまっている。30代後半から40代前半で主役を張れる人ってのがいなくなってるのだね。だいたい「演技派」という言葉は日本においては「スター性のない」人に与えられてる呼称に過ぎないんで、実際にそう呼ばれてる人の演技が上手いかどうかってことになると、疑問符がつく場合が多い。いや、ヘタとまでは言わないが、感嘆するほど上手くもないんだよ、みんな。
しかも更に困ったことには、どうやらカントクさんはこれを「ドタバタ」として作るつもりはなかったらしいのだ(-_-;)。じゃあマジメに作ってるかというと、そういうのとも微妙に違うから、さてどう言ったらいいものか。
倍賞美津子演ずる吾妻“師匠”ヨシエが100円貯金をしている。いつか北海道に行って、オーロラを見るのが自分の夢だ、と原田美枝子の香取雅子に語る。しかしその夢をヨシエは果たせなくなる。物語のラスト、雅子は師匠の代わりにオーロラを見に、北海道に行くのだ。
ヒッチハイクでトラックに乗った雅子は、女の運転手(吉田日出子!)に「どこに行くんだい?」と問いかけられて、「オーロラを……」と答える。
「そりゃでっかい夢だ!」と大笑する女運転手。そしてトラツクの行く手には「ホントに」オーロラが広がっているのだ。
なにが痛いって、これが全く「ギャグ」ではないということなんだよなあ。脚本家、これから先の雅子に何か希望があるとでも思ってんのかね? 確かに直接人を手にかけているわけではないが、雅子は死体損壊、遺棄の犯罪者なんだけどねえ。
どうもこの物語、「日常に縛られて耐え忍んでる女は、罪を犯してでもそこから脱出していいんだよ」なんて「女の甘え」を肯定してるような描写がそこかしこに散見しててイヤラシイんだよなあ。平凡がそんなにイヤか。家庭が崩壊したのだって、「ホントの私はもっと素敵で、アンタたちの日常につきあってやってるだけなのよ」って自分の高慢ちきな態度が原因だとは思わんのか。いや、マジな話、この雅子って女、シンデレラ症候群を未だに引きずってるんだわ。だからって、どうして選りに選って、香川照之に引っかかるかな(^o^)(原作じゃ間寛平のほうにも引っかかってるらしい)。
しかもオーロラまで出すなんて、明らかに監督は、そういう女に「媚びた」演出してるしなあ。
映画を見終わってのしげとの会話。
「地味だったなあ、オマエは面白かったか?」
「つまんなくはないけど、面白いってほどじゃ……」
「だよなあ。よかったのはせいぜい小木さんかなあ。いや、あのトシで『万引き』しちゃうんだもんねえ」
「あ、あれは面白かった」
「でも女房が原田美枝子だったら万引きしたくもなるよなあ。情けない亭主やらせたら小木さんは上手いねえ。『模倣犯』も似たような役だったじゃん」
「オレ、実は小木さん好きっちゃ」
小木さんというのは小木政光氏のことである。リストラされて妻からもバカにされてると感じてて、つい万引きしちゃうという役。脇にばかり目が行ってしまうのは我々夫婦の悪いクセではあるのだが、実際、この人の情けなさぶりが一番リアルで上手かったんだから仕方がない(^_^;)。
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11月03日(日)
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