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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■『ハリポタ』ホントに面白いか?/『呪いのB級マンガ 〜[好美のぼる]の世界〜』(唐沢俊一&ソルボンヌK子監修)
 マンガ、唐沢俊一&ソルボンヌK子監修『呪いのB級マンガ 〜[好美のぼる]の世界〜』(講談社・1680円)。
 ついに出たまるまる一冊好美のぼる本。世に唐沢俊一ファンは多かろうが、こういうプロデュース本まで楽しんで読んでる人はやっぱり「ケッタイ」な部類に入るんではなかろうか。なんだ私か(^_^;)。
 唐沢さんやK子さんがプッシュしているからと言って、じゃあ「好美のぼるは面白いよ!」と人に勧めることができるかと言うと、それはやっぱりちょっとためらわれるところなのである。ただ、それは好美のぼる作品が必ずしも「つまらない」せいではない(読んでつまんねーじゃん」という感想を持つ人が多かろうとは思うが)。
 大衆が消費する文化にも様々な質があって、マンガにおいても、作家性やアーティフィシャルな面が強い作品もあれば、マンガ表現の職人技を見せてくれるもの、ただひたすら荒唐無稽でナンセンスなものなどがあって、その全てをひとくくりにできるものではない。好美のぼるを始めとする貸本マンガや、オヤジマンガ、エロマンガ、4コマ専門誌などは確かに粗製濫造ではあるのだが、ある意味「どうせ読み捨てなんだから何やってもいい」という「デタラメさ」や「自由さ」もそこにはあるのである。そこに常識では考えられないすっとぼけた笑いも生まれてくるのだ。ジャンプマンガを始めとする少年マンガにはシバリが多すぎて、突き抜けた面白さってのはないからね。
 収録作品の『毒香水』、轢き逃げされて顔をメチャクチャにされた少女が、復讐のために麻薬の入った香水を犯人の少女たちに贈って廃人にしてしまうのだけど、いくらクスリが切れて苦しいからって、フツー、女の子が犬のポーズを取って「ウーッウーッウーッ」とヨダレ垂らして唸ったりはしません(^_^;)。一応少女マンガなはずなんだけど。
 しかもラスト、全ての復讐を果たして高笑いした主人公、次のコマで「この手でとうとうやったのになぜ寂しいんだろう」とか言っていきなりクビ吊って死ぬし。間が無いっつーか、「あと1ページしかなかったのでとりあえず結末つけました」っつーか。
 そんな好美さんがライバル視してたのは、手塚治虫だそうである。まあ、先日の『ロック・ホーム』について書いたことでもあるが、初期作品は手塚さんも思いっきり適当でアンチクライマックスな結末つけてたから、確かに同列に並べてみること不可能じゃない。けれど、劇画に対抗するようになって以降、格段にドラマとしての厚みを重ねていった手塚さんに比べて、好美さんは全く変化しなかった。でもこれはこれで「一切の迎合が無い(いや、時流への迎合はあるんだけれど、全て「好美流」に昇華されている)」という点でスゴイことなんだけれど、その偉大なるマンネリを理解するには、世間はもちっとマンガの持つパワーについて学習せねばならんと思うのだ。
 好美のぼる、タダモノではないのだよ。

10月23日(水)
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