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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■たかが賞金で金持ちにはなれない/アニメ『あずまんが大王』最終回/『西洋骨董洋菓子店』4巻(よしながふみ)
部屋がそろそろ本もビデオもDVDも置ききれなくなってきている。
本気でエロの冒険者さんに部屋を斡旋してもらわなければならなくなりそうな気配なのだが、如何せん、先立つものが全くない(^_^;)。
こないだ、何の気なしに「小説でも書いて、懸賞に応募しようかなあ」と呟いたら、しげの目がランランと輝き始めた。
「金持ちになると?」
なるか(-_-;)。
「お前、俺に面白い小説が書けると思ってるのかよ?」
と言うと、「別に面白くなくても、テキトーな固定ファンがつけばいいやん。やったあ、金持ち化計画やね!」と、世間を舐めきった発言をする。
そのときはそれだけで終わったつもりだったのだが、今日になって、しげからメールが送りつけられてきた。
……江戸川乱歩賞と鮎川哲也賞の応募規定(・・;)。
しげは本気だ。
しかもこんな恥ずかしいこと、日記にも書けないでいたのに、「なんで日記に書かんの?」と責められるので仕方なく書いた。これで私を追いつめようって腹だろうが、これで私がやっぱり小説が書けなくても、仮に書いて落選しまくっても、そりゃ、私に才能がないってだけの話だから、それだけのことである。
だいたい日記の更新もホームページ立ち上げもままならぬと言うのに、小説が書けるというのか。
少なくとも、誇大妄想で自分に才能があると吹聴するやからと同じと思われるのも癪なんで、先に言い訳しとこう。こんな弱腰の臆病者に、マトモな小説が書けるわきゃないのである。読者諸賢も期待しないように。
マンガ、よしながふみ『西洋骨董洋菓子店』4巻(完結/新書館/WINGS COMOCS・557円)。
上手い。
切ない。
けれど、明るい。
こういうマンガが描けたら、マンガ家冥利に尽きるんじゃないだろうか。
わずか4巻で完結するとは思いもしなかったけれど、ダラダラ続くより、このくらいの長さが丁度よかったかもしれない。
登場人物たちの昔語りも3巻までで一通り終わり、予想通り最終巻は橘のトラウマにケリをつける展開。
橘が九歳のころに誘拐された事件と全くそっくりの誘拐事件が頻発に起こる。
かつての事件の犯人の現在も描かれ、事件は再び彼の犯行なのかと読者に気を持たせつつ、刑事が橘のもとにやって来て張り込みを始める。
未だにかつての悪夢に悩まされる橘は、自分が待ち望んでいたのは、過去に決別すると言うよりは、突然の犯人の変心で、放り出されてしまった過去の「続き」を、自ら紡ぐことではなかったかと気付く。
事件は解決する。
変わらぬように見えた時の流れも、確実に橘たちの身の上を少しずつ変えて行く。エイジはパリに発った。千影は「私がいなくても大丈夫だから」と言って去った。
再び、『アンティーク』は橘と小野、二人だけの店になった。
けれど、小野は言うのだ。
「そんなに長い年月が経ったわけじゃない。この窓から見える家並だってあの頃とちっとも変わってない。なのに……今は店に二人だけだった頃がひどく懐かしい気がするよ……」
それは多分、彼らの中でなにかが「終わった」からだろう。
橘とかつての誘拐犯との最後の「出会い」。
彼らの、お互いに対する感情に名前を与えることができるだろうか。
愛でもない。憎しみでもない。もともと彼らの間には何もなかったし、今もなにか明確なものがあるわけではない。
けれど、彼らは確かに今でもつながっていて……そしてそれが、多分、人と人を結びつける唯一の「絆」だから。
だから泣けるのである。
私は愛の物語では泣かない。だが、理屈のない、「絆」の物語にはどうしても泣けてしまうのである。それは、私としげを結んでいるものでもあるのだから。
10月01日(火)
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