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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■ほしのローカス(笑)/『トライガン・マキシマム』7巻(内藤泰弘)/『コータローまかりとおる!L』4巻(蛭田達也)ほか
大学時代、下宿先の学生が、私以外みんな、原作の『エース』にかぶれちゃって、アニメ版、劇場版を「原作の精神を全く解ってない」と憤慨してたが、いったい原作の『エース』にどんな思想があるというのか。私ゃ妄想しか読み取れなかったんだけれど。向上心も精神修養も、それが規範扱いされて人を縛れば宗教にしかならんと思うんだがねえ。
夜中の3時頃、ペルセウス座流星群が北東の空に見えるとのニュース。
あいにくの空模様なのだが、もしかしたら見えるかもしれない、と思い、仕事帰りのしげを誘って、須恵の岳城という山に向かう。
街中では明る過ぎて見えないことは解りきっていたけれど、どの山に登れば条件がいいかは解らない。ニュースでは「雲が出ていますので、南の方に行かないと」と言ってたが、具体的な山の名前は言わなかった。
岳城は南というより東にある。そこを選んだのは、そこなら道を知ってる、ということでしかない。
山腹に公園があって、乗用車が何10台も並んでいる。てっきり我々と同じ空の観測に来たのかと思ったが、誰も外に出ていない。ただの駐車場がわりにしてるかと思ったが、側を通ると人が乗っているのである。
……こんなとこまで来てヤってんじゃねえよ(-_-;)。
とてもこんなところで観測はできないので、行きつ戻りつ、山上の広場の側に車を停める。
ずっと昔、中学生の頃、友達とみんなでキャンプをした。
水を汲みに、山間の小道を歩いていて、ふと見上げたら、空一杯に天の川が広がっていた。
そのころも目は悪かったが、まだ今よりはマシだった。どれくらい、そこで空を見上げていたろう。水を持って帰って、「どこまで行ってたんだよ!」と友達に叱られたから、結構な時間、ぼーっとしてたのだ。
「もう、こんな星空は見られないかもしれない」
そのとき、そう思ったのが、当たった。
視力は年々衰えている。右目はときどき血管が切れるようになって、霞むことも多くなった。
何年か前、同僚と雑談していて、「もう星を見ることもないかもって思いますよ」と言ったら、「まあ、そうでしょうね」と笑われたことがある。その同僚とは結構親しくしていたのだが、その一言がその人との絶縁の動機になった。思い返せば青臭い話なのだが、この人には「孤独」の意味ってのがわかんないんだよな、と悟ってしまったのだ。
今日、星が本当に見えると思っていたわけではない。
ただ、しげと一緒に星を見たことがなかったな、と思って、それで衝動的に行きたくなったのだ。
暗い中、私は足元も見ずに広場に上がって行く。どうせ見たって見えないのだから同じことだ。しげの方が心配しているのか自分のほうが怖いのか、懐中電灯で私を照らしながら追って来る。
「そんなん光らせてたら星も見えんよ」
私の側に来て安心したのか、しげ、懐中電灯の光を消す。
しばらく、流星雨が流れるという北の空を見た。
しかし、山の上でも、平野の電気は空をそれとなく照らしている。雲間にチラチラと星が見えなくもないが、そこにもまたうっすらと雲が掛かってはいるのだろう。昔見た、あの星の群れには程遠い。
しげが「何か流れた気はするけど、錯覚かも」と言う。
しげの視力は1.0以上だろう。そんな錯覚すら私には見えない。
もう、見えないな、と諦めたが、まだ帰るわけにはいかなかった。いつの間にか流れ出していた涙が乾いてくれないと困るからだ。
「星が動いてない?」
としげがバカなことを言う。
「星は動かねえよ」
と答える。
「目がおかしいのかな、ほんとに星が動いて見えるんだよ」
多分、雲が動いているので相対的にそう見えているのだろう。
夜目に慣れて、何となく足元も見えるようになってきた。
10分か、20分か、そこにいた。
そして、帰った。
多分、またいつかしげを誘って、星を見にいく。そのときも見えないかもしれないけれど、それでも見にいく。
付き合わされるしげには迷惑かもしれないが、せっかく夫婦になったのだから、これくらいのワガママは許してもらいたい。
08月12日(月)
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