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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■手帳求めて花いちもんめ/DVD『刑事コロンボ 別れのワイン』/『忍者飛翔 桜の章』(和田慎二)
 毎回、コロンボ役のピーター・フォークと、犯人役の名優との丁々発止が楽しい本シリーズであるが、実際には、歴代犯人の中には、名前が売れてる割に演技が大根って人もいて(誰とは言わんが、『○○ー○○ッ○』シリーズの○ー○船長で有名なアノ人とか。見るからにアホなのに、二度も犯人役演じてるんだよなあ)、作品自体が腑抜けた印象になっちゃってるものも多い。
 その点、『別れのワイン』の犯人、エイドリアン・カッシーニを演ずるドナルド・プリーゼンスは文句なしの配役である。一般には『007は二度死ぬ』の初代ブロフェルドで有名だが、『大脱走』、『鷲は舞い降りた』ほか、100本以上の出演作がある名優中の名優。残念なことに、あまりに重要な役が多すぎて、晩年は『コロンボ』に出演したことはすっかり忘れちゃったらしいが(^_^;)。
 しかし、この犯人がシリーズ中最もユニークな犯人であることは間違いない。なにしろ、全犯人中ほぼ唯一、コロンボの共感を得るという稀有な役柄なのである。ワイナリーの経営権を、ワインの価値も分からぬバカな弟に奪われることを阻止するために犯した犯罪。視聴者の同情は被害者にではなく犯人側に注がれることになる。
 オタクならばこの犯行心理は容易に理解できよう、子供のころ、せっかくコレクションしたオタクグッズを親に捨てられそうになって、殺意を抱いたことがなかったかどうか。私の場合、あまりにそんな経験が多すぎて、母親が死んだときも恨みが晴れた気持ちの方が大きくて、全然哀しくなかったくらいである。多分、親父が死んでも哀しくないな。須らくオタクの道は外道の道か。
 コロンボが、ワインコレクターであるエイドリアンと対等に会話するために、“本気で”ワインの勉強をするところがまさにオタク泣かせ。その懸命の努力があったればこそ、犯人もまた、彼になら逮捕されても悔いはない、と観念するのだから。オタクは、自らの価値を知るもののために死ぬものだ。ちょっと違うか(^_^;)。
 もう一つ、犯人がコロンボに逮捕される決意をするのが、秘密を知った女秘書に結婚を迫られたから。やっぱ、オタクは女よりグッズを選ぶよな。厩火事厩家事(←意味の分らない人は落語通に聞いてみよう)。

 気になるのは、以前は封入パンフに書いてあった、追加声優(NHK放送時には本編がカットされていたので、完全版では追加アフレコをしなければならなかったのである)、なぜか今巻から記載されなくなっている。
 コロンボは故・小池朝雄に代わって銀河万丈さんだということが前巻までの記載で分かるのだが、ドナルド・プリーゼンスの声が誰だか分からない。オリジナルの中村俊一ではないのは間違いないのだが、追加のセリフがヒトコトだけなので全く見当がつかない。
 こういうところ、手を抜くなよユニバーサル。大事な記録なんだぞ。


 マンガ、和田慎二『忍者飛翔 桜の章』(メディアファクトリー/MFコミックス・599円)。
 3巻が先に出たけど、これが『忍者飛翔』シリーズの第一作。
 「幼馴染どうしの恋」とか、「陰ながら少女を見守る少年」とか、今の和田慎二の諸作よりもよっぽど少女マンガマンガしてる展開だけれど、それでも「忍者」って設定だけで当時は充分少女マンガ界から浮いてたんじゃないかな。
 無意味に脇キャラを死なせるあたり(しかも爆死させたり食わせたり、悪趣味が鼻につく)、やっぱり作劇はヘタだけれど(手塚譲りだな)、長編ものよりはまだ見られる。長編になると設定の破綻が激しくなるからな。読み切りシリーズの方が和田さんはまだ体質に合ってると思う。

08月03日(土)
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