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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■病院への長い道/『エンジェル・ハート』4巻(北条司)ほか
 スレッサーと言えば、『怪盗ルビィ・マーチンスン』。小林さんはこれを「ぬるい作品」と評し、「こんなのを載せてたから、『ヒッチコックマガジン』は潰れた、と人から言われた」ことを書いているが、代表作と言われる『ママに捧げる犯罪』よりも日本で一番人気があったのが、この『怪盗ルビィ』であったのだ。だって私ですら読んでるし(つーか、これしか読んでませ〜ん)。
 しげは読んで「つまんない」って言ってたけど、自分では大泥棒のつもりなのに、何をやっても“善意”の行動になってしまうってところが洒落ててよかったんだけど。和田誠が映画化したときには、ルビィは女(小泉今日子)に変えられたけれど、これが『ヒズ・ガール・フライデー』の故智に倣ったことは一目瞭然だし、ルビィというキャラクターがより可愛らしくなっていて、これは成功だったと思う。
 映画化に合わせて、文庫カバーが私の好きな画家さんである楢喜八さんから小泉今日子の写真に変えられちゃったのは残念だけど。映画の宣伝をしたいときは、オビを付けるだけにしてほしいものである。
 

 DVD『必殺必中仕事屋稼業』、一気に6話から12話まで見る。
 『必殺』シリーズを余り熱心に見てなかったのは『時代劇は必殺』とか言っときながら、全然時代劇じゃなかったからだけれど、こうして通しで見ると、時代劇になってるのとなってないのとの振幅の差が激しいね。
 第八話の『寝取られ勝負』は、下飯坂菊馬脚本、三隅研次監督で、セリフなんかもしっかり江戸江戸してるんだけれど、第十二話の『いろはで勝負』は、もう笑うしかない。半兵衛と政吉が、乱れた遊郭を潰すために中に潜入するのだけれど、味方のフリをするためにでっち上げたソープランドのアイデアが評判取って大繁盛する。でも、当時から江戸にソープはあったんだけど。湯女ってそんな役割だし。奇を衒いすぎると、かえってつまんなくなるものだ。
 江戸の雰囲気出せてないと言えば、おまき役の芹明香、どう見ても現代人。好きな女優さんだから文句言いたかないけど、三隅監督には嫌われてたみたいだなあ。第八話では付け足し的に最後にワンシーン出てるだけだし、第十話では全く出番がない。池波正太郎から始まったシリーズだから、時代劇としてきっちり作りたい人と、おもしろけりゃ何でもアリの人と、スタッフ間でも考え方の違いがあったんじゃないかなあ。
 まあ、バカ時代劇は誰でも作れるんで、時代考証ちゃんとやってくれてる作品の方が私は好きだな。もちろん、「仕事屋」なんて職業が当時なかったことはわかってるけど、その、ドラマ造りのための虚構と、ただのいい加減とはワケが違うからね。だからホントはご新造さんには歯に鉄漿しといてほしいんである。婆ちゃんの世代まではやってたんだから、私には違和感ないしなあ。
 ああ、でも三十年近く前のドラマだから、ゲスト出演者も、相当数の人が死んでるなあ。
 菅貫太郎、和田浩二、菊容子、天津敏、神田隆、真木洋子、東野英心、藤岡重慶、岡田英次、みんな故人だ。しかも、お年だし仕方ないって人がほとんどいないぞ。若死にが多すぎる。ドラマ見てても、なんか切なくなってくるね。


 マンガ、北条司『エンジェル・ハート』4巻(新潮社/バンチ・コミックス・530円)。
 あ、なんだかいきなり日常編に入っちゃったな。
 それも、香と阿香との組織適合性がほぼ同一、という「奇跡」があってこそのことだけど、奇跡の大安売りはどうもねえ。ジャンプ系のマンガ家さんはやっぱりどうしてもハッピーエンドを望むのかね。……だったら最初から香を殺すなよ。ドラマ造りのためにキャラを勝手に使い捨てしといて、後で適当に辻褄合わせするいい加減さ、腹立たないのかね、かつての『シティー・ハンター』ファンは。
 けれど、アクションシーンより日常描写の方がずっとうまいな、北条さんは。細かく書きこんでるし、デッサンはしっかりしてるから、「うまい」と錯覚されてるけど、北条さん、マンガとしては下手なほうだ。細かく描きすぎてるせいでアクションなのに絵が「止まる」こと多いんだよね。まだ『キャッツ・アイ』のころの方が線に伸びがあったぞ。

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07月13日(土)
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