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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■戦争は終わった/DVD『名探偵登場』
私のフェイバリットコメディ映画の上位に位置する作品、これを「意味がわからん」とか「デタラメだ」とか「つまらん」とか言うヤツは全員縊り殺してやるから覚悟しとけ。まさしくその通りの映画なんだよ(~_~;)。
『おかしな二人』のニール・サイモンによる探偵映画のパロディ……というタテマエだけれど、実はこの「探偵“映画”」のパロディというところがミソで、特典でもニール・サイモンがインタビューに答えて言ってるが、「探偵“小説”」のパロディではないのである。
まずはそのあたりから語ろうか。
大富豪、ライオネル・トウェイン(演ずるは『冷血』の作家、トルーマン・カポーティ!)は長年探偵小説のファンだった。
しかし、あまりに読者をバカにしたヘボミステリーの多さに辟易し、ついに5人の名探偵を屋敷に呼び寄せて、実際の殺人事件を起こし、その謎が解けなければ笑いものにしてやろうと計画する。
その5人の名探偵が、かつて実際に「映画」で活躍していた名探偵たちなのだ。
まずはディック&ドーラ・チャールストン夫妻。
ダシール・ハメット原作のニック&ノーラ・チャールズ夫妻が活躍する『影なき男』シリーズ(原作は一作だけだが、映画はウィリアム・パウエルとマーナ・ロイによってシリーズ化された)のパロディ。
陽気なアメリカ人夫妻だけれども、モトの映画は随分洗練されてたムードだったから、これにデビッド・ニーブンとマギー・スミスを充てたのは正解。『ハリー・ポッター』ではすっかりおばあちゃんになっちゃったマギー・スミスだけど、この映画の当時はまだまだ若くて、知的な美人。役自体は今一つ知的じゃないんだけど。
シドニー・ワン警部とその息子、これもアール・デア・ビガーズ原作の「チャーリー・チャン(張)」シリーズがモトネタ。と言っても私もこの作家ばかりは原作本を読んだことはない。なにしろ日本での出版点数が少ないし、今入手できる本もほとんどない。そのためにイマイチ無名で、どうしてこんなのが? と疑問に思われる方もいるだろうが、実は戦前のアメリカでは40本以上の「チャーリー・チャン・ムービー」が作られているのである。サイレント期には日本の上山草人(『七人の侍』の琵琶法師ね)なども演じていたそうだが、ワーナー・オーランドやシドニー・トーラーのチャンが有名。1981年にはピーター・ユスチノフもチャンを演じている。
シドニーを演ずるは変装の天才、ピーター・セラーズ。まぶたを一重にして怪しい英語を操り、いかにも胡散臭い中国人を熱演しているが当初はオーソン・ウェルズが演じるはずだったとか。チャンは代表肥満という設定だから、こちらの方がパロディとしては合っていたかも。
ベルギー人探偵ミロ・ペリエと運転手マルセルは、言わずと知れたアガサ・クリスティー原作のエルキュール・ポアロ。
もちろんこの映画が制作された当時は、ピーター・ユスチノフもましてやデビッド・スーシェもポアロを演じてはいない。戦前の映像化ということで、『アクロイド殺し』『ブラック・コーヒー』『エッジウェア卿の死』に主演したオースティン・トレバーがサイモンのイメージにはあったのだろう。あるいは舞台でポアロに扮したチャールズ・ロートンも一時は「これぞポアロ」と言われていたらしく(原作者は演技がフザケすぎてて嫌いだったそうだが)、そちらに対するオマージュの度合いの方が強いかも。なにしろ、そのロートン夫人であるエルザ・ランチェスターが、本作ではもう一人のクリスティーの名探偵のパロディを演じているのだから。
ペリエ役者は『ラ・マンチャの男』でサンチョ・パンサを演じたジェームズ・ココ。「ネスパ?(そうですね)」とフランス語で聞いて、ミス・マーブルスから「ネスパじゃないわ、コーヒーよ」とボケ返されるギャグはベタだけど大好きだ。
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07月01日(月)
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