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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■役者や脳/『三谷幸喜のありふれた生活』(三谷幸喜)/DVD『DAICON FILM版 帰ってきたウルトラマン』ほか
 要するにこの人の文章、「ぶりっこ」なんだわ。なんつーかねー、四十ヅラ下げたオヤジがぶりっこしてたら、そりゃ気持ち悪いのもしかたがないっしょ。

 三谷さんの芝居に出てくるキャラクターは、どんなにオトナなフリをしていても、実際は全く幼稚なコドモである。そのギャグも小学生の学芸会レベルで、それが舞台や映画では、「いいオトナが幼稚なことをしている」ために観客に笑いが生じる。
 でもそれが笑えるのは、そのオトナコドモがあくまで舞台の上のキャラクターだからだ。目の前にホントにそんなやつがいたら、鬱陶しいだけだわな。自分がナマに出てしまう(ように見える)エッセイを読むことは、まさしくそんな「お近づきになりたくないやつ」を相手にしているのと同じことだ。いくら作者がユーモアのつもりで書いていても、読者にしてみれば「どうして小学生の作文で笑ってやらなきゃならんのだ」って気になってしまう。
 松たか子が自分のシナリオを読んでも笑ってくれないって愚痴ってるけど、卑しくも芝居の台本書いてる三谷さんが、演じる役者がいちいち台本読んで笑ってちゃ仕方がないってこと、分らないわけがない。つまり、これもユーモアのつもりで書いてるんである。でもよう、中年男が拗ねてる様子を見せられても嬉しくもなんともねーよ(-_-;)。
 エッセイもまた演技の一つ、役者として書いてるつもりなんだろうけれど、それにしちゃキャラクター造り、間違ってないか。
 けど、これで「三谷さんってシャイな人なのね」と勘違いするバカオンナもやたらといるんだろうから、それはそれで、戦略としては当たっているのかもねえ。

 映画『みんなのいえ』のメイキング本としても読めるのだけれど、役者さんたちに対してはミーハーを演じて見せてるから、映画作りの裏話的興味はイマイチ薄い。せっかく和田誠さんにイラスト描いてもらってるのにもったいないなあ。


 マンガ、柴田錬三郎原作・柳川喜弘画『眠狂四郎』4巻(新潮社/BUNCH COMICS・530円)。
 うーん、柳川さん、作画は馴れてきたのだろうけれど、狂四郎の無明の感じは全然なくなってきちゃったなあ。
 原作だと、美保代に肩入れするのも、そこに自分と同じ暗い運命を見出してるからだし、祖父・松平主水正への思いも母をないがしろにした恨み、なんて単純なものじゃない。
 これじゃただの時代劇ヒーローものだし、狂四郎が「いいひと」に見えちゃうよ。キャラクターにも少し深みを与えてほしいもんだけど、ジャンプ系の漫画家さんって、そこが一番ヘタなんだよねえ。


 マンガ。細野不二彦『ザ・スリーパー』4巻(小学館/サンデーGXコミックス・560円)。
 次巻で完結ってことで、今巻はまるまる1巻使って一本のお話。
 でもねえ、現実と妄想の区別がつかなくなって破滅する人間ってモチーフは、エドガー・ポーの『黒猫』や『ウィリアム・ウィルソン』のころからずーっと続いてる「怪談」のテーマだからねえ。現代のマンガにリライトするんだったら、もう少しアレンジが必要だと思うんだけど。
 妄想世界で「胡蝶」(「最も純度の高い胡蝶」だから「最胡蝶」=「サイコ蝶」ってネーミングはなんとかしてほしいけど、こういうしょーもないシャレ作るクセ、昔からなんだよな、細野さん)を捕らえれば、現実世界での犯罪者も捕らえられるって設定は、プラシーボ効果をもとにしたアイデアだろうけれど、ちょっくらムリがないか。
 ムリがあると言えば、心清き無垢な精神にしか棲まないはずの「白獏」が、どうしてイマドキなコギャルなうつつにとり憑いてるのか、納得のいく説明がほしいもんだけど。


 夕方、宅急便で待ちに待ってたDVD『DAICON FILM版 帰ってきたウルトラマン ―マットアロー1号発進命令―』が届く。
 ウワサのみは聞いていたけれど、見るのは全くの初めて。大学時代は、まさかこんなもん作ってる同世代の連中がいるなんて、思いもよらなかったものなあ。
 後の鬼才、庵野秀明の監督作と言っても、あくまでアマチュアによる8ミリ作品である。欠点をあげつらっていけば、いくらでもツッコミは入れられるだろう。
 しかし、断言する。

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06月24日(月)
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