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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■騙されて騙されてどこへ行く/『ありえない物語』(ポール・ジェニングス)/『マンガ狂につける薬21』(呉智英)ほか
 あとの答えはどうぞみなさんで確かめてください。

 http://www15.xdsl.ne.jp/~azuma/menu210.htm
 

 しげ、12時前に帰宅、二人で「めしや丼」に向かう。
 とっくの昔にしげはウキウキしていて「これからラブラブになろうね」とかアホなことをこいている。
 これだからしげと真剣にケンカになることがないのだ。


 ポール・ジェニングス、吉田映子訳『PJ傑作集1 ありえない物語』(トパーズプレス・1121円)。
 オーストラリアの作家、ジェニングスの短編集第1弾。
 あと『とても書けない物語』『がまんできない物語』『想像もつかない物語』『先の読めない物語』『信じられない物語』『やってられない物語』と続いてるらしい。
 ヒトコトで言えば、現代版オー・ヘンリーと言った趣きのアイデア小説集。
 なぜか言葉の最後に「シャツも着ないで」と付けなければ喋れなくなってしまった少年の物語や、時限つき接着剤を売りつける詐欺師の運命を語る話や、便所に出る幽霊の話など、設定は面白いんだけれど、「どれもどこかで読んだことがあるような」という印象がしてしまうのがちょっとネックか。
 もうここ7、8年のロングセラーになってるらしいけれど、この手の小説が読みたければ、フレドリック・ブラウンの短編集をまず読んでほしいね。『天使と宇宙船』とか。


 マンガ、石ノ森章太郎『歯車 石ノ森章太郎プレミアムコレクション』(角川ホラー文庫・820円)。
 『マスカーワールド』に続く角川ホラー文庫の石森章太郎アンソロジーの第2弾。第1弾の方は全作読んでたんで買わなかったのだけれど、今回は『石森章太郎読切劇場』の完全収録を初めとした、雑誌掲載のみの作品の単行本化。これが嬉しいね。
 何より巻頭が名のみ有名であった小松左京原作による『くだんのはは』!
 正直な話、私は『くだんのはは』がそれなりの佳作だとは思うけれど、ホラー中のホラー、大傑作とまでは思ってない。ギャグとホラーは紙一重、とは言うが、その「ギャグ」の方にちょっと傾いちゃったかな、というのが私の印象だ。
 ましてや「絵」で見せるマンガが、アレを笑わずに見せることができるのか、と考えたら、むこりゃ結構難しいんじゃないかと私が危惧するのも原作を読まれてる方にはご理解いただけると思う。
 一読して見て、途中までの展開はナレーションに頼り過ぎている面はあるものの、油の乗りきっていたころの石森さんのテクニックが縦横無尽に駆使されていて、戦時中を舞台にした原作の厚い雲に閉ざされているかのようなどんよりとした雰囲気をうまく出している。でも肝心のラストは……やっぱりいただけない。やっぱりちょっと笑ってしまった。怖い人には怖いのだろうけれど、アレを怖く見せるにはやはりページが足りなかったのではないか。つーか、アレをはっきり絵にしちゃ、やっぱり笑いしか起こんないような気がするんだけれど。
 ホラーとしては『読切劇場』のいくつかの短編の方がよっぽど怖い。
 石森章太郎自身をモデルにした『鋏』。新進マンガ家と、そのファンである二人の少女の淡い恋。けれどそれはマンガ家の婚約で無残にも引き裂かれる。
 その大半はフィクションだろうが、もしかして本当にあったことかも、と思わせるのは、少女の一人が、自分の身に起こったことを、まるでもう一人の少女の身に起こったことのように語る、その「虚構性」のゆえにである。
 ほかにも『怪談雪女郎』や『遠い日の紅』などはまるで一編の映画のようだ。
 これだけの傑作シリーズが今まで一部を除いて埋もれていたというのは、なんとモッタイナイことであったか。
 ラストの『マタンゴ』はもちろん東宝映画とのタイアップ企画。
 ページ数が少なすぎてとても映画ほどのインパクトは与えられないが、これはまあ、CDならボーナストラックと言ったところか。
 

 呉智英『マンガ狂につける薬21』(メディアファクトリー・1260円)。
 日本にはこれだけマンガが氾濫してるってのに、マンガ評論家としてコンスタントに本を発行してる人は意外と少ない。
 雑誌の書評自体はあちこちで見かけるんだけれど、単行本として纏まっちゃうと売れなくなるのかもなあ。

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06月10日(月)
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