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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■人間失格かな、やっぱ/『『鉄人28号』大研究』(飯城勇三)/『ちょびっツ』3・4・5巻(CLAMP)
 ちょっとかわいそうなのは、カラー版のテレビアニメ(『太陽の使者 鉄人28号』『超電動ロボ・鉄人28号FX』)の監督を務めた今沢哲夫のインタビューで、苦しい制作態勢やスポンサーの意向に振り回されていいものを作れなかった事情は分かるのだが、本文の解説でも横山光輝御大のインタビューでも「あれは最低だ」と言い切られている。
 「正太郎が成長して結婚して子供がいて」という設定は、かつてモノクロ版の『鉄人』に親しんだ世代であれば、「ふざけんなバカ」とスタッフを殴り殺したくなるような噴飯物であったが、その最低な設定を案出したのが脚本の園田秀樹である。この一事をもって、たとえほかにどんなすばらしい脚本を書いていようとも(多分ないが)、「バカ」のヒトコトで括られることになるのだ。
 たとえ時代が下ろうと、今に合わせるんじゃなくてあくまで当時の風俗で作るんでなきゃ意味がない。それができないなら『鉄人』をリメイクする意味自体がないのだ。
 ……けれど、モノクロアニメ見てたころの私って、1歳だったんだなあ。
 その頃の記憶、はっきり残ってるのも多いんだけど、それくらいテレビのインパクトって我々の世代にとっちゃすごく強かったんだなあ。


 マンガ、CLAMP『ちょびっツ』3・4・5巻(講談社/KCキャラクターブックス・各1375円)。
 初回限定版で、それぞれ、クリアファイルブック、システム手帳、六角パズル付き。フロク付きとは言え、ちとボッてないか。
 うーむ、ただのロリコンエロマンガかと思ってたら、俄然面白くなってきたぞ。意外や意外。
 『エンジェリックレイヤー』はテレビとの連動企画であったせいか、ダイジェストっていうよりテンからドラマになりきれてないウラミがあったが、今回は実にじっくりゆっくりと話を進めている。何しろ未だに「ちょびっツ」シリーズってのがどんなパソコンなんだか解らない(^_^;)。判ったのは「ちぃ」の本名(?)が「エルダ」ってことくらいだ。
 「ちょびっツ」開発に関わったらしい管理人の日比谷さんが語る「あなた」とは誰なのか。
 ちぃの記憶はなぜ封印されなければならなかったのか。
 ちぃを探しているらしいディタとジーマもパソコンなのか。
 謎の答えが出かかるたびに後から後から新たな謎も増えてるから、こんなん、あと何巻かければ全部説明し終われるんだろうかって心配になるが(『エヴァ』モドキになるなよ〜。ちぃも何となくアヤナミチルドレンだからなあ)。
 こういう謎って、全部ただのマクガフィンで、もしかしたら作者もあまり細かい設定を考えてないのかもしれないけれど、「なぜパソコンが人型をしているのか」って謎の答えと関連はしているのだろうな。

 機会と人間の関わりを考える、という命題は、もちろん『鉄腕アトム』以来の、あるいはアシモフの『われはロボット』ほかの諸作以来の、あるいはドイツ映画『メトロポリス』以来の、SFの正統的なモチーフである。
 『X』にも『レイアース』にも、同人誌クサさ(イメージ先行でドラマがおざなりって意味ね)が強すぎて、今いちハマれなかったのだが、今回は何よりまず「語り口」のうまさに感心した。キャラクターが薄っぺらだった『エンジェリック』に比べても、一人一人に深みがある。
 秀樹とちぃはもとより、新保と清水先生のカップルも本筋に直接関わらないまでもいい味出してる。
 ウマイなあと膝を叩いたのは、「チロル」の店長の植田さんと、裕美ちゃんの関係だ。パソコンと結婚した過去のある店長、人がなぜパソコンに惹かれるのか理解できず極度にパソコンを(パソコンに感情移入する人間をも)敬遠する裕美。この命題、突き詰めて行けば当然「心とは何か?」というSF究極のテーマにも行きつく。
 CLAMPマンガがそこまで描いたりするもんかい、とツッコミも入りそうだが、本に夢中になる動機は、なにより「予感」がすることにある。少なくとも、「面白くなりそうな」要素は目いっぱいぶちこんであるのだ。これは期待しちゃいますよ、やっぱし。
 ……しかし、これをまたテレビアニメ化って、話が全然進んでないのに、どうやってるんだろうね。

06月05日(水)
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