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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■にほんじんにえーごはむりれす。/『ウラグラ!』(唐沢俊一)/『探偵学園Q』4巻(さとうふみや)ほか
 世の中の怪しげなモノ、ヘンなモノ、ありふれていて見過ごしやすいモノ、そういうものにスポットを当てていく試み、それが「今」の貴重な記録になるということ、唐沢さんや串間努さんの仕事はまさしくそれだと思うんだけど、この分野、もっともっと追従者が出てほしいものだ。
 『七人の侍』制作時のエピソードで、本来は何の変哲もない一侍の日常を描こうと思ったのに、そんな記録がどこにも残ってない。仕方なく「野武士から村を守った侍がいた」という実話を元に、講談のエピソードなどをツギハギしてサムライ西部劇に仕立て上げたのがアレ。あの名作が実は「逃げ」の産物だったわけだね。『鸚鵡籠中記』があの時に発見されていたら、黒澤明、そっちを映画化してたんじゃないか。
 ことほどさように「日常」というものは残りにくい。特に古典を読んでいくとその思いは特に募る。
 『枕草子』の「あてなるもの」や「うつくしきもの」に見える、「かりのこ」というやつ、これがどんなものだか諸説紛紛としてよく解らない。鳥のヒナだという説もあれば卵のことだとも言う。その鳥も、雁だの鴨だの鶉だの一定していない。多分全部正しいんじゃないか(^^)。一つの言葉が何通りもの意味を持つこと、よくあることだからだ。
 『更級日記』に「源氏の五十余巻、櫃に入りながら、在中将(伊勢物語)、とほぎみ・せり河・しらら・あさうづなどいふ物語」に読み耽る作者の姿が描かれるが、これもどんな物語だったか、『源氏物語』と『伊勢物語』を除けば、名のみ残るばかりである。
 日本最初の国語辞典、『色葉字類抄』が成立したのは平安末期の1180年のことだから、実は文学爛熟期の平安女流文学の大半に、こういう「謎」の言葉が山積しているんである。
 どんな俗語であろうと、記録は必要なんだよな。

 しかし、この本の内容もいちいち紹介してたら何10ページかかるかわかんないや。
 お題に選ばれてるのが、天気予報、路上の人形、モールス信号、直子の代筆(自動手紙文作成サイト)、ネクタイ、女性の下着、サザエさんの家、都会の闇、地震、少年期の性の悩み、裏本、ハネムーン・インポテンツ、……だんだんエロな話題が出て来たのでこのへんでやめよう(^_^;)。
 膝を打つ知識あり、照れる知識あり、何より神様と唐沢さんの掛け合いという語り口が楽しい。 

 ただ、こういう知識の宝庫みたいな本だと、どうしても細かなミスというか粗探しをしてみたくなるのが読者の性(サガ)。
 唐沢さん、『トンデモ一行知識の逆襲』でも間違えてたけど、宇能鴻一郎のミステリ作家としての別名、「嵯峨島昭」を「嵯峨島譲」って書いてるぞ。周囲に誰か注意してあげる人、いなかったのか。
 ついでに言えば、「二葉亭四迷は親に『くたばってしめえ』と言われたのをペンネームにした」と説明してるのもただの俗説。「くたばってしまえ」のモジリであることは事実だけれど、「親」から言われたわけでなく、四迷自身の自戒である、と自著にちゃんと記してある。俗説の方が通りがいいのは仕方ないけどね。

 あ、それからソルボンヌK子さんの挿絵で、紐で縛られてるメガネヒゲイヌ、これ睦月影郎さんなのかな?(^o^)


 マンガ、天樹征丸原作・さとうふみや漫画『探偵学園Q』4巻(講談社コミックス・440円)。
 さとうさん、絵はうまくなったと思うんだけどねえ、トリックが『金田一』のころに比べてどんどんレベルダウンしていくのはどうして?
 もっとも、『金田一』時のトリックは殆どがパクリだったから、それを「ハイレベル」とは言い難いんだけどね。オリジナル作品はやっぱり低レベルだったし。
 しかも、今回もメイントリックは江戸川乱歩の少年向けミステリのパクリ(「少年向け」と言ったところで、レベルは見当がつくよね)。パクるにしたって、志が低すぎるぞ。
 これってつまり、『名探偵コナン』に対抗して子供向けに下方修正したってことなんだろうけど、話がつまんなくなってるだけだって。

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04月14日(日)
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