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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■さよなら半村良/ドラマ『盤嶽の一生』第1話/『かりそめエマノン』(梶尾真治)
そのあたりを割り引いても、時代劇でこれだけ面白いものに出会えたのって、初期の必殺シリーズ以来じゃないか。
……やっぱ、昔の原作、もっと掘り起こそうよ。
若い脚本家に時代劇、マジで書けなくなってんだから。
SF作家・半村良氏が4日死去。享年68歳。
期待しちゃいなかったけど、『太陽の世界』はやっぱり完結しなかったな。『妖星伝』を完結させただけでも立派なものだけど。実はどっちもまだ読んでない(^_^;)。せめて『妖星伝』くらいは読んでおかないとなあ。
でも私が最初に好きになった半村さんの作品は『収穫』だったのだ(って、デビュー作じゃん)。『サイボーグ009』の『天使編』のもとネタになったヤツ(よくあるネタではあるんで「盗作」とは言えないけど)。
あと、『H氏のSF』。
後の長編伝奇SFの流れを作った経歴からすると、半村さんの短編ばかり好きになるというのはご本人には申し訳ないことかもしれないけれど、なんだか半村さんの長編って読みにくくてねえ。
実は一番好きなのは、NHKでドラマ化もされた『およね平吉時穴道行(ときあなのみちゆき)』。
コピーライターの「私」が、江戸時代の戯作者、山東京伝の文献を調べて行くうちに見つけた岡っ引平吉の「こ日記」(「こ」の字は変体仮名)。それには京伝の妹、およねへの恋心が切々と綴られていた。
しかし、ある時、およねは神隠しに遭う。しばらくして、平吉の日記はいきなリ明治に飛ぶ。平吉は、その記載を信じる限り、百数十年生きた計算になる。
この不可解な二つの事実は何を意味しているのか。
「私」はその意味を突き止めかねているうちに、ふとしたことから、歌手の菊園京子が、誰も読んだことのないはずの「こ日記」の内容を知っていることに気づいた……。
SFを絵空事とバカにする人にはこのドラマも「ありえないこと」で片付けられてしまうのだろうか。
しかし、基本的にSFはメタファーなのである。いや、虚構自体が現実のメタファーなのだと言っていい。
だから、物語が現実に即しすぎては逆に読者はそれを「他人事」としか思えず、感情移入を妨げることにもなる。
時代を越えた恋。もちろん、現実にそんなことはありえない。
しかし、我々は結局、自分たちが生きてきた「時代」に束縛された形でしか生きられない。
育った環境が、国が、文化が、年齢が違うことが「壁」となって、二人の恋を引き裂くこと。
それを最初に教えてくれた小説はこれだったように思う。
あ、それから古い東京人が「向う岸」のことを「向こう河岸(がし)」と呼ぶこともこの作品で知ったな。こういうディテールも、すごくよくできてるんだよねえ。
これは、もう、私のフェバリットSF短編の筆頭だ。
原作もよかったが、ドラマもすばらしくよかった(1977年。ついこのあいだだねえ)。
主人公と、この字平吉の二役を演じたのは寺尾聰。およねには由美かおる。山東京伝に西沢利明。朴訥で冴えない平吉に寺尾造聰はハマリ役だったし、時代を越えた美少女(というトシではなかったが)というムードを当時の由美かおるは確かに醸し出していた。うん、これ以上はないって配役だったなあ。
原作にはない平吉の「そりゃねえよ」というセリフが繰り返される演出、実に印象的だった。杉山義法の脚本、スバラシイの一語に尽きる。
つい何年か前にも再放送があっていたから(録画し損ねた!)、ビデオ化は可能なはずだ。……やれよNHK。
梶尾真治『かりそめエマノン』(徳間デュアル文庫・500円)。
宇宙の誕生以来の記憶を持つ少女、エマノンシリーズの最新作。
って、ネタバレいきなりカマしちゃってるけど、これがシリーズになってなかったら、当然、エマノンの正体、この日記にも書かずにすましてるよ。
うーん、難しい評価になっちゃうけど、このシリーズはもう、第一作が最高傑作なのはこのエマノンの設定にかかってることなんで、あといくらシリーズ続けても第一作を越えられない仕組みになってるのね。エマノンの魅力にトリコにされちゃった読者の方々には悪いんだけど。
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03月05日(火)
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