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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■伝統と革命の間/『蟲師』2巻(漆原友紀)ほか
 歌舞伎ファンの目は存外厳しいのだ。
 にもかかわらず、そういう歌舞伎の細やかさが、現代人の我々には見えなくて、つまらないもののように思われちゃってるってのは、例えば男が少女マンガの表現が稚拙に見えるのと同じで、「慣れてない」だけなんだよね。

 岡田さんは「歌舞伎に慣れてない」。
 それは確実だ。
 だから、御本人は「伝統芸能だからすばらしい」と誉めた気になっているようだけれど、結局、シロウトが余計な口を差し挟んでることにしかなってない。
 昨日の『アイランド』の話にも共通することだけど、「文化の違うもの」を理解することって、そんなに簡単なことじゃないのだ。「自分とこの文化ではこうだ」、「でもあそこんとこの文化はうちのと違う」「だからあの文化は間違ってる」……そんなことは簡単に言えるもんじゃないって、わかんないのかな、岡田さん。
 ある文化の尺度を絶対のものとして、別の文化の価値をダメだなんて言っちゃいけないってことは、基本なんだけどなあ。

 これが全く逆に、「歌舞伎も現代人の嗜好に合わせて変わるべきだ」というならまだわかるよ。猿之助さんの「スーパー歌舞伎」はまさにそれだし。
 その立場に立って「伝統遵守派」に対してもの申すっていうなら、納得はいくのだ。
 でも、「つまんないけど伝統だからいい」なんて立場は、結局なんなのかね?
 これ、歌舞伎に対してなにも言っていないに等しい。
 結局、岡田さんには歌舞伎に対する知識も関心もないのだ。
 それはシュミの問題だから別に全然構わないことなのだが、ならば岡田さんが歌舞伎について語る必要だって全然ないではないの。
 歌舞伎はね、面白いから続いてるの。それが普遍的ではないってだけのハナシで。
 で、歌舞伎ファンだって、世間的には歌舞伎がつまんなく思われてるってことは重々承知の上なのだ。
 だから今更、岡田さんに「歌舞伎ファンは目をそらすべきではない」と言われたって、「別に逸らしてないよ」のヒトコトで終わっちゃうのだ。
 そんなことより、今の歌舞伎がつまんないのは、その「所作事」をキチッと演じられる役者が減ったってことの方が大きいんだけどな。それは歌舞伎における血統主義が崩壊しかかっているからなんであって、岡田さんの主張とは全く逆なんである。

 どうしていきなり岡田さん、歌舞伎について語り出したかな?
 夏目房之介さんが歌舞伎ファンだから、なにか言われてカチンときたのか。
 そのへんは憶測だから、なんとも言えないし、「知識がなくても発言はできる」のだけれど、唐沢さんがせっかく注意してくれたんだから、せめて「勉強不足でした」くらいのことは感じてほしかったなあ。

 ああ、こういうこと書いてるからって、私が歌舞伎についてクロウトだなんて思わないようにね。演劇評論家の渡辺保さんの主張からのウケウリっスよ。私も歌舞伎はたまにテレビで見るくらいです。


 『キネマ旬報』2月上旬号に、アメリカ版『鉄腕アトム』の正式発表のニュースあり。
 タイトルが『Astro Boy』だってのと、アトムがCGってのは聞いてたけど、アトムだけでなく全てをCGIで制作することに変更されたとか。
 これは明らかに『トイ・ストーリー』以降のCGIアニメのヒットがもたらした結果だろう。『シュレック』『モンスターズ・インク』がヒットして、『アトランティス』がコケたとなれば、迷う必要もない。
 基本的に人間までCGで作画することを、私はどうも好きになれない。
 CGと手描きアニメの違いは、手書きアニメがコマ落としによって残像効果を出せるのに対して、CGはそれをしない、つまり、動きが「滑らか過ぎる」てしまうことなのだが、あれだけ細密な『ファイナル・ファンタジー』ですら、登場人物の動きは「人間」に見えなかった。いや、へたに細密だから、人間との動きの違いが目立つのだ。

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02月26日(火)
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