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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■厳密な計算/『透明な季節』(梶龍雄)/『コータローまかりとおる!L』2巻(蛭田達也)ほか
 アニメ『ヒカルの碁』第十一局「最も卑劣な行為」。
 ダケさん、本格的に三谷を攻めるの巻。
 作画も安定していて、まあ、悪い出来ではない。
 よく見ると、ヒカルの学生服の影の付け方が最初のころよりも原作に近くなっている。さて、こういうところも原作ファンがクレームつけて変えさせたのかな。でも、中学生編になって間がないから、自然とスタッフの中に「原作に忠実に」という思いが広がっていったのかもしれない。
 大胆な演出を望むか、原作への忠実さを望むかは一概には言えない問題なんで、せいぜい「慣れない表現のし方で、作画が乱れなきゃいいがな」くらいしか言えないなあ。
 梅沢由香里さんの「GOGO囲碁」のコーナー、ごく初歩的な石取り問題らしいのだが、既に全然解らない。お袋にもっと囲碁も将棋も習っとくんだったなあ。母親が死んだ時に一番心残りだったのは、実はそのことだと言ったら、バチアタリなやつと思われるかもしれないが、事実だからしかたがない(^_^;)。


 マンガ、蛭田達也『コータローまかりとおる!L』2巻(講談社・410円)。
 敵のアメリカ忍者、名前がみんな実在、ないしはマンガの忍者の名前をもじってるんだなあ。
 トビー・ケイトーは「飛び加藤(加藤段蔵)」だな。小島剛夕の『半蔵の門』では、家康に自分を売りこんで、自在に涙を流す技を見せていたが、史実の加藤は武田信玄配下になろうとして失敗、殺されたらしい。忍者ファンには人気の高いキャラを敵ボス(中ボス?)に持ってくるあたり、蛭田さん、なかなかわかってらっしゃる。
 オーザ・ルイってのは「大猿」のことたろうな。言わずと知れた白土三平の『サスケ』の父ちゃんだ。えらくあっさりやられちゃったが、「分身」はいないのだろうか(←『サスケ』読んでないとわかんないネタ)。
 ちょっとわかんないのがくノ一のシーノ・タッカー。
 もしかして、これ、マンガ家の「椎名高志」のモジリか? ちょうどこないだまで「忍者マンガ(『MISTERジパング』)」描いてたし。


 梶龍雄『透明な季節』(江戸川乱歩賞全集11/講談社文庫・1250円)。
 最近、ミステリというか推理小説は、50歳……せめて40を過ぎた人間が書かないとまともなものは書けないんじゃないかという気がしている。
 紋切り型の「人間が描けていない」という評価はしたくないから表現を変えるけれど、どの小説を読んでも「行動が不自然で説得力に欠ける」人物がやたら多いのだ。
 トリックに拘るあまり、そんな結末があるかい、と本を投げ出したくなることが多々ある。
 しかし、じゃあ、老練な作家によって書かれたミステリが面白いかというと、今度はミステリとしての発想が陳腐で、読後感は「それで何が面白いの?」とこれまた作者に問いかけたくなる。
 江戸川乱歩賞を取った作品であってもそれは同じで、本作はどうやら後者に属するもののようだ。
 なにしろ「人間が描けている」ために、出てくる人物に聡明なヤツが一人もいない(^_^;)。しかも「戦時下に起こった事件」ということで、警察もあまり捜査に積極的ではない。
 だからこの事件が「迷宮入り」になったのは(なっちゃうのだよ!)、「時代」のせいなんであって、つまりはこの事件の真犯人は「戦争そのもの」とも言えるのだ。
 ある意味、そのこと自体、非常に特異なトリックと言えるかもしれないが、いささか卑怯ではある。だって、事件そのものは単純というか謎らしい謎もなく、多分、「現代であれば」迷宮入りになるような事件ではないのだもの。

 戦時下の旧制中学校で、軍国主義の権化のような配属将校・諸田、通称「ポケゴリ」が射殺される。
 主人公の少年、芦川高志(作者自身をモデルにしていると思しい)は、犯行時刻、現場近くで、「スパイ」の疑いのある教師・北上、通称「アオセビ」を目撃するが、彼が自分の憧れの女性、薫(ポケゴリの妻)の隠れた恋人であることを知ると、複雑な心情にとらわれはするものの、その事実を証言せずに沈黙を守る。

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12月19日(水)
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