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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■おばさんのタイホ/『おさんぽ大王』2巻(須藤真澄)ほか
 新谷真弓さんもそうだが、私はちょっとダミ声系の女優さんに惹かれるところがあるのだ。今後の演技次第ではゆきじさんもごヒイキになるかもな。


 さて、世間は「サッチー」逮捕で揺れている。
 脱税ったって、そりゃやってるだろう、あの人ならって感じで私にはあまりにも当たり前過ぎてインパクトがない。
 でもマスコミはホントに喜んでるよなあ。
 いかにも悪役然としたキャラクターが、いかにもな犯罪を、世界情勢が混沌としているさなかに、実に卑近な例としていかにもなタイミングで起こしてくれたのだ。
 これを喜ばない手はないよねえ。
 国税局もとうの昔に脱税に気付いてたのを、金額がデカくなるまで取っといたんじゃないか。経歴詐称だの、契約不履行だの、その程度のコツブな犯罪でこれだけのキャラクターを逮捕しちゃ申し訳ないって理由でさ。

 でも、ホントにそんなに大層な人か? 「サッチー」って。
 もともとスキャンダラスな人だったのかもしれないけれど、所詮は市井のオバチャンでしょ? あのヒト。
 「有名人」ってことにいつの間にかなっちゃったけど、あの人、実はタレントでもなんでもない、ただの「野村克也夫人」じゃないの?

 確かに本人が「有名人っぽく」、ノって振る舞ってたってこともあるんだろう。でも、どうしても驚嘆しちゃうのは、よくもまあ、これだけ「悪役」然としたキャラクターを作り上げることができたよなあ、ということだ。
 ある意味スゴイか? マスコミも。
 まさに筒井康隆の『俺に関する噂』。
 三浦和義事件以来、現実に「ただのヒト」にニュースバリューを付与して「事件」をデッチ上げる手段をメディアは学んでしまったのだ。「でもあの事件は本当にやってんじゃないの?」と思われてる方、私が言いたいのは事件そのものじゃないのよ、事件の周辺まで「事件に仕立て上げられていく」ことを言いたいわけ。……だって、あの時は三浦和義を悪役にし立てるために「過去のスワッピング」の事実まで報道してたぞ。そんなん事件に関係ないやん。
 でも、これならいくらでも「ニュース」が作れる。実に効率的な方法なのだ。そして、「なんの関係もない周辺の事実」が、じわりじわりと三浦和義の「悪役」像を作り上げていった。今度の「サッチー」騒動と似てないかな?

 果たして、我々一般人がマスコミの「洗脳」にうかうかと乗っちゃっててもいいものなのか。
 既に彼女を「サッチー」なんて呼んでること自体、マスコミに心理的に誘導されてしまってる証拠だ。これ、池田小学校乱入事件の宅間守を「タクマ君」と呼ぶ心理と共通してないか。
 だからあの人、ただの「野村佐知代」って普通の人なんだってば。
 普通の人だから、普通の人の感覚で脱税をし、当たり前の結果として逮捕されちゃったのだ。
 新聞にまでデカデカと載っけなきゃならんようなニュースじゃないよ。
 でも、どうせまた「ミッチー」も出てくるんだろうね。
 マスコミに躍らされて。

 ……ま、みんな踊りたいなら踊れば?


 マンガ、須藤真澄『おさんぽ大王』2巻(アスペクト・893円)。
 しげがいきなり、「ねえ、こうたろうさんの家って、『千社札博物館』?」と聞いてくる。
 まだ『おさんぽ大王』の2巻を読んでなかった私は思わず「なんやそれ」と言ってしまったが、目にしてみて、なるほどそうか、と納得。以前、こうたろうくんが「『おさんぽ大王』にうちのことが載ってる」、と言ってたが、確かに絵で見るかぎり、家の間取り、中の様子がそっくりだ。
 須藤さんが地元墨田区の「小さな博物館運動」を探訪するってものだが、このマンガ、基本的に「旅にロマンはない」というつげ義春の『リアリズムの宿』路線で書かれてるものだから、常に須藤さんの「来て見てみりゃあ、こんなもんかい」という、「挫折」が描かれている。
 でも、せっかく取材してもらっても、描かれる内容が「挫折」じゃあ、取材されるほうにしてみれば多少イヤーンな感じになっちゃうところがあるのだ。

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12月05日(水)
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