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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■凡人礼賛/DVD『エイリアン9』2巻/『魔獣狩り』(夢枕獏・木戸嘉実)ほか
けれどようやく佐為は「解放」され、ヒカルはただの人に落とされた。
ここで作者は従来の読者に対して、これまでと同等の快楽を与え続けることを拒否した。物語はついにタイトル通り、『“ヒカルの”碁』を描き始めたのだ。もしかすると本作は、ジャンプマンガのセオリーから逸脱して、全く新たな地平を切り開いていくのではないか。
たとえ佐為が復活したとしても、今までのような読者のサディズムを満足させるような展開にはなるまい。下手をしたら、人気はズルズルと落ちて行くことにもなりかねないが、それでもいいと思う。凡百の見せ掛けだけのヒーローマンガにはすっかり食傷している。ファンの方には悪いが、中年になろうという私には、『ワンピ』も『テニプリ』も『マンキン』も『ナルト』も、全て「どこかで見たことのあるマンガ」でしかないのだ。
私は、同じ勝負ものではあっても、新しいマンガが読みたい。本当に普通の子が、一歩一歩、自分で自分の階段を登って行く、そういうマンガを読みたいのだ。そんなマンガ、いかにもありそうだけれど、実際には殆ど書かれたことがなかったのだから。
ややこしいことをコネ回して書いてきたけど、つまりようやく『ヒカ碁』は、読者に「君だってヒカルになれる」と訴えるマンガになりつつあるのである。……やっぱり佐為には復活してほしくないんだよなあ。
帰宅してみると、しげは留守。
携帯に電話してみたら、どうやら鈴邑くんたちと飲んでるらしい。
「理由」は察しがつくので、「いつ帰る?」などと野暮なことは聞かない。
私がよく他人から「いい夫」などと誤解されてしまうのは、こういうときくだくだと妻に絡んだりしないからだが、これは単に私の美意識の問題だったりするのだ。
事実、しげには私があまりに淡白なので、「もうちょっと心配してほしい」と言われて不評なんだが。
けどここで私が「いつ帰るんだよう。オレをほっといてどこ遊び歩いてるんだよう。本当はオレの知らない誰かと浮気したてるんじゃないのか。きっとそうだ、エエエ悔しい口惜しい、この裏切りものめ、○○め、○○め」とか言い出したらすごくイヤだと思うんだがな。
帰宅したしげ、にへらへらと笑って飛び跳ねながら抱きついてくる。
なんかラブラブですってか?
いや、そんなツヤのある話ではござんせん。全体重をかけてのしかかられるので、腰に来るだけですって。
ま、お察しの通り、しげがついに自動車の実地試験に合格して、「若葉マーク」をもらったってことなんですけどね。
まだ筆記試験が残っているが、本人は「アンタ知らないね。私、公式の暗記だけは得意なんだ」と言う。
つまりそいつは、「応用はてんでダメ」ってことだから威張れたコトでも何でもないんだが、どっちにしろ8月から初めて三ヶ月、飽きっぽいしげにしてはよく続いたものである。ここは素直に誉めてあげよう。
まあ、口には出してやらん(^^)。
私が余り嬉しそうでもないので、しげ、なんだか不満顔だが、これも博多人の美意識なんだと思いなって。
劇団メンバーの鈴邑くんの話。
彼に二人目の赤ちゃんができたことはこの日記にもチラチラ書いてたと思うのだが、今日しげから彼が現在「求職中」であることを初めて聞いた。
「……なんで? こないだ仕事めっかったとか言ってたばかりじゃん」
「だからやめたって」
「赤ちゃんもいるのに? いったいなんでまた……」
「前に勤めてたとこより、今の職場、給料も安いし休みも取らせてくれなかったんだって」
「だからって、すぐに次の職が見つかるかどうかわかんないのに……」
「日曜日にも仕事入れられちゃうんで、『劇団に顔出せないから困る』って上司に言ったら、『劇団と仕事とどっちが大事だ!』って怒鳴られたんで、『劇団です!』って言って辞表出したって」
……ああ、なんかカッコイイ。
カッコイイけどバカだぞ鈴邑君。
いや、雇用条件を詳しく知らないから簡単にバカって言っちゃいかんかもしれんが、少なくとも私が同じことをしたら絶対周囲からは「バカ」って言われる行為だよ、それは(・・;)。
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10月23日(火)
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