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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■携帯綺譚/『雨柳堂夢咄』5巻(波津彬子)ほか
波津彬子『雨柳堂夢咄』5巻、おお、ついに波津さん「化けた」な。これまでの四巻、無理矢理作ったような不自然さの目立つ話も多かったが、今巻には一切ない。珠玉の名編ばかりである。
骨董不思議話、という程度の認識しかなかった初期作品に比べ、シリーズが軌道に乗ってきて、作者が「これはものを通じて人と人の縁(えにし)を描いていくのだ」という明確な意識を持ち始めたのが成功の理由だろう。
釉月(ゆつき)という少女を登場させたことで、煮詰まりかけていた贋作師・青二郎のキャラクターに一気に広がりが生まれてきた。いいなあ、釉月ちゃん。「もの」の心を読み取る不思議な手の持ち主、という設定もいいのだけれど、陶芸家の修行のために男の子の格好をしている、というのもタカラヅカの変形ではあるがたおやげでよい。
実はこの少女、青二郎の義理の姪にあたるのだが、さて、この因縁深き二人、今巻では未だに出会っていないが、いつの日か出会う日はあるのか。そのときの雨柳堂の役割は……と興味は尽きないなあ。うまいこと話が転がり始めたら後は勢いに乗るばかりである。
そして、今巻中の『籠の中の鳥』と『花野』の二作は、波津さんの作品としても最高傑作であるのみならず、少女マンガの歴史においても最も完成度の高い幻想譚である。そこにいない鳥かごの鳥を見ることのできる少女の「思い」は、少女が運命に翻弄されるたびに揺れ動いていく。一度は見えなくなった鳥の姿が再び見えるようになった時、その「思い」はどう変わっていったのか、それとも変わらなかったのか。ああ、駄目だなあ、こういう切ない話読んでると文章まで少女趣味になってきちまうぜ。
いや、好きなんだけどね。
……次巻も期待して読もう。
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NHK教育の『天才テレビくんワイド』、ちょっと前から『魔界探偵』というのを放送している(再放送らしいが)。下手な大人ものより、子供向けに作られたものの方が良質な番組が多い昨今(私は『名探偵コナン』など結構けなしていたりするが、もちろんある程度以上の水準作であることを認めた上で「今回はちょっと……」と言っているのだ)、意外といい出来かも知れない、と思って本格的に見てみた。
ただ、今回が第2回、残念ながら第1話を見逃しているので、設定がどうもよく分らない。主役の子供たちの周りにいる修験者風の男女は誰なんだ。妙な格好でうろついていても誰も疑念を持たないから、女房などは「あの人たち、主人公たちにしか姿が見えないの?」と首を傾げていた(どうやら式神らしいな)。世間的にはこの二人が人気で大人のファンもついているようだ。でも役名が玄武(伊達直斗……マスクはかぶらない)と朱雀(谷口絵梨……おお、なかなかの美人)って、モロだな(^o^)。
「魔界(?)」にいるらしい王朝風の狩衣を着た子供たちはいったい何者なのか。過去の人間にしては喋り方が現代っ子である。単に昔言葉だと視聴者のお子さんに分らんということでそうしたのか、それとも魔界にいながら現代語の勉強でもしていたのか。ううむ、せめてオープニングで設定を語ってくれる『コナン』程度の演出はほしいぞ。
でも話自体は決して手抜きをしていない。今回の事件は機械的なトリックであったが、私は別に機械的トリックよりも心理トリックの方が上という立場はとらないので文句はない。ただ、犯罪は人間の心に取りついた悪霊が起こさせるもので、そのモンスターを封じて終わり、というのにはいささか苦笑。……そんな力持ってるんだったら、ミステリ仕立てにせんでも犯人が誰か透視できる力くらい持ってないのかと言いたくなるが。
なにしろ、この物語の真の探偵役はCGで作られた安倍晴明なのであるから(^o^)。そりゃ、万能だわな。この辺の設定をアザトイと見るか、盛り沢山と見るかで、評価のし方は変わるだろう。
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02月15日(木)
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